フェムウォッシング Femwashing

最近ちょくちょく耳にする「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」。では、女性に寄り添うようなメッセージを出しながら、商業的に女性を食い物にする「フェムウォッシング」は聞いたことある? 今週はスウェーデンの2つのフェムウォッシング調査についてです。
ブロムベリひろみ
2021.09.26
誰でも

swelog weekend nr 25

〈今週のトピック〉  フェムウォッシング Femwashing
〈今週のブログ記事〉 古くて新しい日常
〈今週のスウェ推し〉 すっぱいご近所ビール

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フェムウォッシング〈今週のトピック〉

グリーンウォッシュ」とは環境によいことを連想させるグリーンと「うわべを取り繕う」という意味を持つ英語のホワイトウォッシュという言葉をかけ合わせた造語で、いかにも環境によいことをやっているように上辺だけを取り繕う企業活動のこと。「SDGsウォッシュ」も同様で、実態がないのにいかにもSDGsに真剣に取り組んでいると見せかける行為を意味する。

グリーンやSDGsのウォッシュは、私も最近いろんなところでよく耳にするようになったけれど、今週スウェーデンのニュースサイトで「フェムウォッシング Femwashing」という、これまでみたことのなかった言葉を見かけた。

大手ニュースメディア、ダーゲンス・ニュヘテルの記事タイトルから
大手ニュースメディア、ダーゲンス・ニュヘテルの記事タイトルから

記事中でインタビューに答えていたのは、ルンド大学の人類生態学科で博士課程に在籍するマリコ・タケドミ・カールソンで、少し前に共同で「Selling women the green dream: the paradox of feminism and sustainability in fashion marketing (女性にエコの夢を売る:ファッションマーケティングにおけるフェミニズムとサステイナビリティのパラドックス)」という論文を発表していた。

パターン1「あなたには世界を変える力がある」といい消費させる

この論文でカールソンは「フェムウォッシング」はグリーンウォッシュ・マーケティングが特に女性をターゲットしたものだと説明していて、これは「フェムバタイジング(Femvertising 女性+広告の造語)」とも呼ばれ、特に衣料業界でよく見受けられるという。このような広告は「あなたは気候危機問題を解決するヒーローで、世界を変える力がある」と訴えてくる。

カールソンたちが論文で取り上げている広告例の一つに、2018年に放映され一部で炎上した若い女性向けの人気の衣料品メーカーGina Tricotsが作成した広告ミュージックビデオ「The Way」がある。(ビデオはGina TricotsのYoutubeサイトにはなかったが、監督のポウル・イェーンダルがVimeoにアップしていて、ここでは英語の歌を字幕付きで観ることができる)

vimeo.com

これは「エコなジーンズ」をフィーチャーしたもので、スタイリッシュな白人の女性がインドらしき場所の綿花畑で踊りながら「子どもを学校にやるように農家の人にも教育が必要、化学薬品は賢く使うのがイケているやり方」など、Gina Tricotsが目指す「The Way」を唄ってきかせる。

カールソンは「このビデオはあたかも、消費することが(気候危機問題に対するための)連帯行動や政治家に変革を要求するといった行為の代替であるかのように提示しており、ジーンズを買えばあらゆる問題は解決、とのメッセージを消費者に送っているとすると問題だ」と指摘する。

Gina Tricotsのジーンズを買えば、実際に綿花を摘み安い賃金で化学薬品を使って製品を生産している貧しい人たちの問題は解決すると思い込まされないように、消費することがよいことだと思わされる罠にはまらないようにしないといけない。

パターン2 フェミニズムを謳いながら女性の外見で儲けているのは男性ばかり

フェムウォッシングという言葉は、フェミニズムを全面に押し出し女性をターゲットにしたマーケティング手法とその影で大金を稼ぐ男性経営者、投資家という文脈でもでてきた。これは、いつもスタートアップ情報などを提供しているインターネットサイトBreakitが調査報道で明らかにしたものだ。

この記事では強い私、女性の解放や自由など、フェミニズム的な価値にフォーカスしながら、そこで実際に売られているものは、女性の外見に焦点を当てたものが多いという特徴を持った広告を取り上げている。さらには女性のためを謳いながら、その企業の創業者や投資家たちはほとんど男性一色だ。

この記事の反響は大きく、すぐにテレビの情報番組でも取り上げられたほどだが、そこで例として話されていたのが、女性用のボディカミソリ・サブスクプションブランドのESTRID。(下記リンクはそのテレビ番組のクリップ。5分程度)

www.tv4.se

番組に出演していたBreakitのジャーナリストのヨハンナ・エクストレームは、これらのサービスや商品で誰がお金を儲けているのかに特に注目していて、ESTRIDの場合も背後にいるのはこれまでずっとほぼ男性だけであったことを明らかにした。女性を自由にするためのシェイバーは、男性の金儲けの手段だったのだ、と手厳しい。Estridでは最近ようやく、女性外部投資家の持株が13%程度を占める様になってきたレベルであるという。

エクストレームは、女性がウーマンパワーを発揮しフェミニズムを追求するのであれば、消費することをその手段とするようではだめだ、と持論を展開する。実践するべきは「消費すること」ではなく「所有すること」や「投資すること」で、社会を動かすパワーの強さは「消費」と「投資」の間では段違いに異なるからだと続ける。

やっぱり、お金はパワー。以前のニュースレター「投資されない女たち」や「女性が所有する社会」のことを思い出したよ。では、今日のトピックはこのへんで〜。

swelog.theletter.jp
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古くて新しい日常〈今週のブログ記事〉

こんな生活を強いられて、と思っていたけど、コロナ生活を離れて以前の暮らし方に戻っていいよ、といわれると、それはそれでなんだか、頭も心も準備できておらず、さてどうなることかと心もとない。

元の生活だけど、コロナがこの先どうなるかよくわからないこともあり、また下の記事ではインフルエンザの大流行への言及もされてたりして、ふむ、ちょっと不安だが、まずは日に日に朝が暗くなっていくのに通勤時間というものを日常生活に再埋め込みするところからはじめなくてはいけない。ハードル高いなぁ!

swelog.miraioffice.com
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こちらはまだ決まったわけではないけど、今期の国会で審議される予定の新しい子育て世代への新しい休暇の家族の日休暇の話。おい、おまえたち、これ以上休んでどうするのだ! という声が、日本あたりから聞こえてきそうだけど、休暇はいいな、やはり。

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すっぱいご近所ビール〈今週のスウェ推し〉

コロナの間は友人を家に招くこともなく、先週のニュースレターでも取り上げたシステーメット(国営酒店)にいくこともなかったけれど、先日久しぶりに行ってビールのコーナーをみていたら、うちの近所の小さなお店でも「サワービール」コーナーができていました。

yonasato.com

おそらく、すっぱいビールの浸透具合は日本の方が早かったのではないかと思うけど、今スウェーデンでもすっぱいビールが流行っているよう。私はスコーネのうちの近所の醸造所でつくられているものを2酒類買ってみました。

スコーネの
スコーネの

ビールは別に酸っぱくなくてももちろん発酵しているのでしょうが、すっぱいとなんだか腸の健康にもよいような気が、がぜんしてくる(←勘違いだと思う)。アルミ缶もおしゃれで、ビールはあまり飲まない私もつい買って飲んでしまった。

テイストは、ひとつはパッションフルーツとバニラ、もうひとつの方はマンゴーとパッションフルーツということで、こちらも最近お酒かわりによく飲んでいたコンブチャによく似てる。しかし、当然のことながらサワービールにはアルコールが入っているので、おいしい、とかいって調子にのって飲んでいると酔っ払うのでした。

すっぱいビール、すっぱいもの好きでまだお試しになってない方はぜひどうぞ。あー、すっぱい。

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では、また来週!

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