エル連載・「過激化する気候活動家の真意に迫る」

皆さん、こんにちは。スウェーデンは今日から標準時間に戻り日本との時差は8時間になりました。冬時間になり秋もすっかり終盤です。今日はエル連載の更新のお知らせと、長くなるので記事ではかけなかった「活動家に保証されている人権」の話をお届けします
ブロムベリひろみ 2024.10.27
誰でも
北欧通信 145

北欧通信 145

過激化する気候活動家の真意に迫る――本当の環境破壊者は誰か?

今回の連載では、今、スウェーデンで一番目立ち議論を呼び起こす市民不服従活動を行っている「湿地を回復せよ(Återsäll Våtmarker)のヨナタン・フォーゲルクヴィストさんから聞いたお話を中心に記事にしました。

日本から少し遠い話かもしれませんが、このあたりでは湿地と泥炭が気候危機問題に大きく関わっており(それはひるがって世界の二酸化炭素量に跳ね返ってくるわけですが)、私を含めてそれをよくわかっていない一般市民に伝え、そして政治家に適切な決断をしてもらうために過激な行動をとっているだと、そのあたりの決意というか覚悟を、彼の口から聞くことがことができました。

過激な行動にでるアクティビストのことを一度でも「この人たち、いったい何考えているだ」と思ったことのある方は、このエルの記事を読んでいただければ幸いです。

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お話を聞いたのはルンドで行われたある講演会でだったのですが、その時には「湿地を回復せよ」からの話と一緒に、ルンドにある「人権研究所(Institutet för mänskliga rättigheter)」の方から「スウェーデンで環境保護のために私たちが持っている権利」についての話も聞くことができました。

「人権研究所」の調査官のトビアス・ラームさん

「人権研究所」の調査官のトビアス・ラームさん

「人権研究所」というのは、スウェーデンにおける人権擁護推進のために国により設立されたもので、スウェーデン憲法、人権及び基本的人権の保護に関する欧州条約、EU基本権憲章や、スウェーデンがその内容に拘束される他の国際的な人権義務(例えば国連の子ども憲章など)に基づいて人権の保護促進を行う機関で、2022年に設立されたばかりの機関です。

スウェーデンにはオンブズマンという制度があり、人権を侵害されたと考える個人はオンブズマンに調査を依頼することができますが、人権研究所はこのような個々のケースではなく、問題と思われる傾向などを調査して報告書にまとめ、その見解を発表している機関です。

(オンブズマンについてはこちらをどうぞ)

2023年の報告書では、国際的にもスウェーデンでも、気候危機や地政学的紛争で、また民主主義のあり方、個人の尊厳において人権が危機にさらされており、その脅威は増大していることが指摘されています。

講演会で説明された、今のスウェーデンの気候危機活動家たちの人権についての人権研究所の見解

講演会で説明された、今のスウェーデンの気候危機活動家たちの人権についての人権研究所の見解

気候問題活動家の人権に対して、研究所の今の見解は上のスライドにまとめられていますが、簡単に翻訳すると、今、スウェーデンでは

・力強くまた広範囲で効力のある環境とそれに関わる人権運動が行われている
オーフス条約実施においていくつか問題がある
・反抗するママたちメンバーとエネルギー庁のケースは、国連の特別報告者から「重大な懸念」を提起されている
・環境保護活動家に対する判決は矛盾している(一貫性がない)
・平和的市民的不服従に従事する者に対して妨害罪を適用することは、極めて疑問視されるべきものである
・注目を集めた2022年8月29日の道路封鎖に関する控訴裁判所の判決に、明るい兆しをみることができる
・逮捕の根拠が不明瞭で疑わしいケースがいくつかある

ここに言及されている反抗するママたちメンバーとエネルギー庁のケースというのは、反抗するママたちで活動しているエネルギー庁の職員が、エネルギー庁の利益と相反するという理由で解雇された件を指しています。国連の特別報告者はスウェーデン政府に宛てた書簡で「気候変動の危機が叫ばれる今、政府が彼女の平和的な環境保護活動への参加を国家安全保障への脅威と見なしたことを、深刻に懸念している」と述べています。

(反抗するママたちの平和な環境保護活動についてはこちら)

トビアスさんの内容の濃かった話をまとめると、私たちには健康的でかつ持続可能な環境への権利、その環境を擁護する権利があり、表現の自由、デモの自由、団体活動をすることの自由もあります。環境保護、気候危機への活動に対する司法の見解は、これまでヨーロッパの中でも国によってかなり違っていたり、またスウェーデン国内でもその時々や裁判所により異なった見解が出されてきましたが、「注目を集めた2022年8月29日の道路封鎖に関する判決」がこれからの流れを作るのではないかと見られています。

 これは高速道路封鎖で2023年に有罪の判決を受けていた「湿地を回復せよ」のメンバーが控訴審で「この出来事は妨害行為に分類されるほど重大なものではない」され、無罪となったものです。

(こちらは刑罰はなかったけど最初の有罪判決が出たときの記事)

これがその後こうなりました。

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エルの記事では、編集部の方と何度もやりとりをした結果、伝わり方を考え「気候テロリスト」という言葉が何度か使われているのですが、彼らはもちろんテロリストではなく、非暴力で平和的な「市民的不服従」活動家です。「市民的不服従」って言葉は難しくてわかりにくいですが、もっと普及するといいなぁ。

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さて、休日ですし、エンタメの話題も。「Pachinko パチンコ ー シーズン2」観ました? 私は偶然にもこのタイミングで仕事で使っているMacを新しくしてもらったら、AppleTV+3ヶ月無料特典がついて来て、早速シーズン2全8話を観ました。同じ日本という国に住んでいながらそれも大阪という土地に生まれながら、在日韓国人の人たちのことをこれまであまりに知らなかった自分を恥じます。

世界的にヒットしているこのシーズンも、今回も日本ではあまり観られたりしないのかもしれないけど、私からは在日韓国人の歴史を少しでも理解するという意味でも心からお勧めしたいです!私のような昭和な人間には1989年の日本の様子をみるだけでもとてもおもしろい。

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そして、まだ投票所は閉まっていないので、衆議院選挙に投票できるのにまだ行ってない方がいればぜひ行かれてください!私は先週の金曜日、有給をとってコペンハーゲンの日本大使館まで在外投票に行きました。交通費も往復で4300円くらいかかったけど、大使館がこんな近くにある私はまだ恵まれている?

でも先日、外界とつながる道路も通じていないようなスウェーデン最北の村の住民に関するドキュメンタリー映画を観たら、その村には投票所の方が村までヘリコプターでやってきたりしてて、ちょっとうらやましくなりました。そこまでしてくれなくていいから、もうちょっと余裕をもった計画的選挙にしてもらって、ゆったりと郵便投票できればそれでいいですから。もちろんオンライン投票ができればすばらしいけど、それはスウェーデンでさえやってないから、そんな高望みはしません😅

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ではまた!皆さま、お元気で!

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