「女性が所有する社会」
Hejsan(ヘイサン)! 先週の日曜日にスウェーデンを出てコペンハーゲン、アムステルダム経由で月曜日の朝関空に着き、そこから木曜日の午後まで隔離待機施設(ホテル)で過ごした後は、今も自宅での隔離生活を続ける私の、この一週間の最大の関心事といえば体を動かすことでした👯♀️
こちらはアムステルダムのスキポール空港の様子。やっぱり人は少なめでした。
2021年4月11日〜4月17日のニュース
今週取り上げたニュースの中にも、体を動かすことと感染症やCovid-19との関連について言及したものがありました👇 ちょっと体、なまってるよなーという方はぜひご一読ください。
これ以外のニュースでは、この一週間で私の頭の中をぐるぐるしていたの は「投資マネー」「投資ファンド」「ベンチャーキャピタル」などなど、の金・金・金のキーワード。最初は、近鉄都ホテルが所有するホテルの一部を、米国の投資ファンド、ブラックストーンが買収したというニュースを読んだのがきっかけでした。
ブラックストーンと言えば、住宅問題を扱ったスウェーデン発のドキュメンタリー『Push』が取り上げた、アメリカやヨーロッパの人々の暮らしの場、住宅を金融商品としてしか見ていないそのひどいやり口で私を恐怖に陥れた、アメリカの大手投資ファンド。(『Push』については以前まとめたので、ぜひこちらを👇ご一読ください。こわいよ!)
そのブラックストーンの魔の手(?)が日本にも着々と伸びてきていると身震いしていたら、週半ばには英国CVCキャピタル出身の車谷氏が社長として率いていた東芝がCVCへの身売りを検討しているとの噂で、車谷氏が突然退任するという、いわくつきの裏話がありそうなニュースもありました。
コロナ禍で生活が困窮する人も増える中で、投資でさらに資産を増やす一方の人もおり、投資できる人だけどんどん儲かるこの仕組みをどう考えればいいのか🤔 と悩んでいた私に届いたスウェーデンからの話題が水曜日に書いた『投資キャピタルとジェンダーバランス』👇。
社会の仕組みを変えていくには、世の中で誰が何をどれくらい所有しているのかという大きな権力構造に目を向けて、それを変えていく働きかけをしていく必要がある。
このブログ記事で取り上げたのは、そんな新しいモノの見方でしたが、今日のニュースレターでは、その「所有とジェンダーバランス」についてのスウェーデンの動きから、もう少し深く見ていきたいと思います。
おっと、その前に、今週は毎日更新のブログでは以下のような記事も取り上げていましたので、ピンと来るものがあればぜひこちらの記事たちもどうぞ〜。
今週のテーマ・「女性が所有する」を目指すスウェーデンのOwnershift
さて、今週のテーマに関してご紹介したいのが、Ownershiftというスウェーデンで2018年に設立されたシンクタンクです。Ownershiftは女性の「所有」実態を調査で明らかにし、これをはっきりと計測可能な形で増加させることで、社会の権力構造に変化を起こすことを目指しています。
変化させて行くにはまずは状況をしっかり把握することから。Ownershiftはスウェーデンでの「所有」の実態を「Who owns Sweden?」というレポートにまとめています。そこには驚きべき数字が列挙されています。
私が一番驚いたのはやはり、この下のスウェーデンの地図で示されている数字。スウェーデンで取引されている株価総額のうち、個人のスウェーデン人女性が所有する割合はたったの4%、というもの。
『Who owns Sweden?』レポートより
これはもともと、株式の多くは公的な年金基金や投資ファンド運営企業などの組織が所有するものが多く、またスウェーデンの組織や個人よりも、海外の組織や個人が所有するものも多いという状況もあり、それらをとりのぞいた後のスウェーデンの個人所有の株式のうちさらに男女の間では女性所有する割合が低く、最終的にこのように数字になっていまるというものです。
しかしここからは、実業界のジェンダーバランスに変革を起こしたいと考えたり、スウェーデンの企業で一層の男女平等を達成したいと思ってもハードルのあることが伺えます。
ここで、少し視点を変えて、いわゆるベンチャーキャピタルの投資の世界をみてみましょう。
ベンチャーキャピタルの世界でもジェンダーバランスが不均衡なことは明確ですが、そうはいっても女性は起業に興味がなく、株式を所有することも、銀行やベンチャーキャピタルから投資を受けて会社を経営したりすることも興味がない、バランスの悪さは女性側にも要因がある、とよく言われます。
この点についてスウェーデンのルーレオ大学のヤネット・ヨハンソン教授が125人の創業者たちへのインタビューを通じて、おもしろい調査結果をまとめていました。
例えば、駆け出しの起業家が、エンジェル投資家とのミーティングにかっこいい高級車で乗り付けたとします。その場合、 その男性起業家は「いいね! もっとガンガンやっていこう」というポジティブな評価を受けるのに、女性の場合は「無駄遣いが多いようだね」とネガティブな評価へとつながるといいます。
Ownershiftを創設したリンダ・ヴァシーンは、実は自身も起業家で、投資家へ自身のビジネスプランを説明するピッチイベントも多数経験していますが、ビジネスモデルを検討してもらう場であっても、女性であるという理由だけで、家庭のことや子育てなどビジネスとは関係ないことばかり質問されることが多いと嘆きます。
またEコマースで成功した起業家であるペルニラ・ニュレンステンは、会社での彼女の立場はCEOであるにも関わらず、共同創業者でデザイン面の担当重役でもある彼女の夫と一緒に投資家に会うと、投資家たちは数字の話を自分ではなく彼女の夫に向けてしようとすると憤慨します。彼は数字には関心も才能もなく、数字に強くてビジネスを全体で取り仕切っているのはいつもペルニラであるのに、です。
2019年の3月に先に上げた「Who owns Sweden?」のレポートを世に問うたOwnershiftは、昨年はなぜスウェーデンでの所有状況が不均衡であるのかについての8つの要因をまとめたレポート「Why isn’t ownership equal between men and women yet?」も発表しています。
あちこちにある「所有」に関する男女間の不均衡を、女性側の意識を改革するというアプローチばかりではなく、社会システム側に根強く残る偏った考え方、ものの見方を是正していくというアプローチで解決していく提言が、このレポートの主旨です。
上記の起業家とエンジェル投資家の例で言えば、女性の起業家が増えないという問題は、起業を望む女性の数を増やすというアプローチだけではなく、投資家のバイアスのかかったものの見方を是正する方法を確立するべきというのがその提案骨子です。
高級車に乗っているというだけで、女性のスタートアップ創業者を投資対象から排除するという判断はひとつの例にすぎませんが、このようにバイアスの掛かったものの見方が引き起こす社会全体への損失に目を向けようという提案です。
上記で紹介したOnwershiftの2つのレポートは、共に英語版もありますので、この社会の偏った「所有状況」と、それを助長してきた要因に関して、興味を持たれた方はぜひ一度目を通していただければ幸いです。
さて、大富豪や投資ファンドや、さらには大企業が何にお金を何に使うのか、そこに対して私たちが影響力を及ぼすことは、とても先の長い大変な話になるかもしれません。しかし私たちにもすぐできることが、他にもあります。
それは私たちが支払っている年金の積立金や、税金で賄われている政府系の投資ファンドに働きかけていくこと。例えば、スウェーデンでは、国が運営してくれている私たちの年金積立金のうち、4%はプレミア年金で、これは積立を行っている私たち自身が、直接積立るファンドの種類を選べるものです。
このファンドに何を選ぶかで、私たちは世の中がどの方向に向かっていってほしいかの意思表示を行うことができます。そのやり方についてはswelogでも、これまでもいくつか取り上げてきました。
私たちは、強欲キャピタリストの投資ポートフォリオに直接影響を与えることはできなくとも、少なくとも政府が税金を使って運営する政府系投資組織の方針には、口をはさむ権利があるはずです。スウェーデンの例で言えば、Ownershiftは、政府系の投資基盤であるAlmiやVinnovaが投資先として選ぶ企業の創業者や経営者のジェンダーバランスを監視する、ということを始めています。
お金はパワーです。
富む人たちだけがそのパワーを使うのではなく、私たちのわずかなパワーでも動かせるものはあるはずです。そしてちりも積もれば大きい! だから、私たちはその可能性を常に探り続けなくてはいけない。
金・金・金。私はこれからは金の亡者ならぬ猛者になって、世の中の動きを見ていきたいと思います。
今週もここまで読んでいただきありがとうございました。先週は急な日本行きの準備で、そして先週の突発的出来事の経験を生かして今週は早めに準備を開始した、と思ったら、なんと、私がtheLetterへの記事のアップの仕方をよく理解していなかったことから、なかなか記事の更新がうまく行かず、今日は配信は無理ではないか、と焦っていたのですが、親切なtheLetterのサポート体制のおかげでこれからなんとか配信できるようです(よかったー!)。
来週もまた今回以上に不慮の事態に備えて準備したいと思っておりますが、もしまたちょっと遅くなったら「swelogったらまた、トラブってるんかいな?」と暖かく見守っていただければ幸いです🙇♀️
ではまた来週〜(予定!😅)
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