世論調査と投票率

奇しくもスウェーデンでも日本でも、在任中の首相が立て続けに辞任を表明。スウェーデンでは1年後の全国統一選挙に向けて、すでに政局と政治の論点論争が盛り上ってきています。かたや、この秋には必ず国政選挙のある日本で気になるのは、依然としての投票率の低さ。世論調査とメディアは投票率を上げるために何ができるのか、を考えてみました
ブロムベリひろみ
2021.09.05
誰でも

swelog weekend nr 22

〈今週のブログ記事〉 ABBAのニュースのなごみ感
〈今週のテーマ〉  世論調査と投票率
〈今週のスウェ推し〉カボニュー・レストラン

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ABBAのニュースのなごみ感〈今週のニュース〉

コロナにハリケーンにアフガニスタン、さらには発砲事件に暴行事件判決。そんなニュースがあふれる中で、ABBAの新曲とアルバム、そしてワールド・ツアーの発表のニュースは単純に心躍るものでした。みなさんは新曲を聴かれましたか?

木曜日の記者会見で情報が解禁になってから「2年前からこのプロジェクトに参加していたけど、口止めされていたバックコーラスの人」へのインタビューやら「ABBAは音楽グループではなくブランド」であるという評論記事やら、ABBAに関する記事やコメントであふれております。

以前は他愛のない話題だったお天気の話も、旅や食事や洋服の話も、政治的な視点を外しては話せなくなってきている今、(とりあえず今のところは?)政治的イシューのないABBAの話を、みんなで口にできる喜びよ♪

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ABBA以外で今週取り上げたニュースは下のリンクからどうぞ。

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世論調査と投票率〈今週のテーマ〉

先週の金曜日にストックホルムのスウェーデン日本国大使館から「在外選挙(郵便投票の活用について)」というメールが送られてきました。この時はまだ菅首相の事実上の辞任表明の前だったわけですが、このメールは、本年秋までに衆議院議員総選挙が実施される予定であること、また在外選挙人名簿の登録方法と、郵便等投票を利用する場合の投票用紙は、選挙の公示日を待つことなくいつでも登録先の市区町村選挙管理委員会に請求することができることなどが書かれていました(👆在外のみなさん、ここ重要)

以前は在外選挙のためにコペンハーゲンの日本大使館に行ってましたが、最近はずっと京都から投票用紙をスウェーデンまで送ってもらってます
以前は在外選挙のためにコペンハーゲンの日本大使館に行ってましたが、最近はずっと京都から投票用紙をスウェーデンまで送ってもらってます

前回の参議院選挙の時は、投票用紙をスウェーデンから投函したら日本に送られずに、自分宛てに間違って送りかえされてきてしまうというひどい!経験をし、結局投票用紙が期日内に選挙管理委員会に届いたのかどうか確信をもてなかった私としては、今年は確実に投票したいところ。

こんなに大きく宛先が書いてあるのですが、裏の差出人の欄も同じくらい大きいので、間違って戻ってきたのは私だけでなく他の国でも多数あり、Post Nordだけがひどいわけでもなかったよう
こんなに大きく宛先が書いてあるのですが、裏の差出人の欄も同じくらい大きいので、間違って戻ってきたのは私だけでなく他の国でも多数あり、Post Nordだけがひどいわけでもなかったよう

この件については河野太郎さんが改善をするよう指示したことを覚えているので、今回改善されたのかどうか、確認するのが楽しみでもあります。

日本の投票率が低すぎる

さて、選挙に際してはどの人に投票するのか、どの政党に投票するのかを選ぶことができるわけですが、日本は近年、投票率が低迷しています。前回の衆議院選挙で53.68%、令和1年の参議院選挙ではなんと半数をきる48.8%でした。

総務省の<a href="https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/ritu/index.html">ホームページ</a>より
総務省のホームページより

一方、スウェーデンは若者の間でも投票率が高いことが知られていますが、全体としてはだいたいいつも90%近い投票率。直近の国政選挙である2018年の投票率は87.2%でした。スウェーデンでのこの高い投票率の背景には、小学校から授業で政治や政党について取り上げ、生活の中で考えることが身についていることなど、数多くの要因があると思います。

その中でも、私が最近気がついて、これなら教育要項を変更するなど大掛かりな変革がなくとも(変革は起きてほしいですが、時間がかかるとも思います)、メディアでの報道の仕方を変えるだけで投票率の向上にすぐ効果がでるのではないか、と思うヒントをもらったのが、スウェーデンでの「支持政党に関する世論調査の設問」と「政党選びクイズ」のキャンペーンです。

支持する政党を調査することに意味はあるのか?

まず最初に説明しないといけないのは、日本では国政選挙の比例代表制においても、議員を選ぶ、という意識で選挙に行く人が多いと思います。スウェーデンでは選挙で候補者名を書くこともできますが、個々の候補者が取りざたされることはなく、選挙は比例代表制一本で、論点となり、また人々が選ぶのも基本的には政党です。

ですから、スウェーデンでは政党を選ぶということが自然と身についている。でも最近のNHKの政党支持率に関する世論調査の数字を見て、ふとあることが気になりました。

www3.nhk.or.jp

ここでは「どの政党を支持しますか?」という設問に対し寄せられた回答のうち「特に支持している政党はない」が42.8%でした

ちょっと待てよ、今の内閣を支持するかしないかを問う内閣支持率なら、質問は「支持しますか、しませんか?」でいいのですが、はっきりと支持する政党があるのは、そうとう政治に思い入れのある人だけになってしまうのでは? 「どの政党を支持しますか」という質問なら、スウェーデンでももしかしたら日本と同じように半数近くは「支持する政党はない」という回答になるかもしれない。特に支持する政党はないが、こちらの政党には政権をとって欲しくないので、他の党に票を入れるために選挙に行く、という理由で投票する人だっているはずです。

さらにこの日本の世論調査では、逆に「支持する政党はない人が半数」という結果をみせてしまうことで「自分も支持する政党もないし選挙は関係ない」と多くの人が思ってしまうという結果に結びついてはいないでしょうか?

支持政党に関する質問と結果は、日本テレビの世論調査TBS(JNN)の世論調査朝日新聞の世論調査などでも同様の傾向です。また日本では、これら以外にも時事通信、読売新聞、選挙ドットコム、共同通信、ANN(テレビ朝日)、毎日新聞、日本経済新聞など多くのメディアが、政府や政党に関する世論調査を頻繁に実施していますが、支持政党に関する設問はみなほぼ同じ質問です。

いちばん考え方が近い政党を(無理にでも)選ぶ

スウェーデンでも同様の世論調査は、国の統計庁や、また各種調査会社からほぼ毎月発表されていますが、これらの調査では政党を選ぶにあたっての設問の仕方が異なっています。

調査会社のNovusが行い、公共放送のSVTが毎月報道している政党に関する世論調査は、「支持する政党」を聞くものではなく「政党共感度調査(Partisympatiundersökning)」といい、「今選挙があればどの党に投票するか?」を具体的に問うものです。たとえ諸手をあげて支持できる政党がなくとも、投票に際し自分の考え方に一番近い政党を選べ! というのがこの調査です。

具体的な設問は、Novusでも他の調査でも「今(もしくは近々)国政選挙があったとしたら、どの政党に投票しますか?」で、これはSifoやIpsosといった調査会社、またスウェーデン統計庁(SCB)の調査でも同様です。上の質問に回答がない場合は「自分はどの政党にいちばん近いと思いますか?」という質問で補完したりもします。

選挙前には政党選びのクイズをメディアが提供

「自分の考え方に一番近いのはどの政党であるか?」の問いに答えるためには、各政党が各政治的論点に関してどのような考え方であるか、その政策要項を理解する必要があります。そのために、選挙の前になるとさまざまなメディアでクイズ形式の質問に答えていくと自分の考え方に近い政党を選んで教えてくれる「政党選びクイズ」が展開されます。

TT通信社による2018年の選挙用の「政党選びクイズ」の全質問30問が<a href="https://valkompass.tt.se/valkompassen18/index.html">サイトでまだ公開されていた</a>のだけど、残念ながら答えても結果はもうでなくなってました。こちらの質問は難民の受け入れについての考え方を問うもの
TT通信社による2018年の選挙用の「政党選びクイズ」の全質問30問がサイトでまだ公開されていたのだけど、残念ながら答えても結果はもうでなくなってました。こちらの質問は難民の受け入れについての考え方を問うもの

私は日本国籍なので、スウェーデンの国政選挙には投票する権利はありませんが、地方自治体の選挙へは投票権があります。スウェーデンでのはじめての選挙では、引越してきて間もないのに選挙権をもらえたのがすごく嬉しくて(それまで日本では選挙に対してはテキトーな人間であったにも関わらず😅)、しかし、どの党に投票すればいいのかわからず、地元の新聞やその頃は人気のあったフリーペーパーに掲載されていたそんな政党選びクイズをやってみたのも懐かしい思い出です。

(この時のクイズの結果、自分の考え方に一番近いのは左党(旧共産党)であることも知りましたが『5%の漸進』の回のニュースレターの「共産党を考える」でも書きましたが、私は「共産党」という党名などにちょっとアレルギーのある世代だったので、むちゃくちゃびっくりして焦りましたよ!)

スウェーデンで外国人が自治体の選挙で投票権を得たのは1976年。当時も今も多い外国籍の住民はフィンランド人。嬉しかったでしょうね、スウェーデンに長く住むフィンランドの人たちは!
スウェーデンで外国人が自治体の選挙で投票権を得たのは1976年。当時も今も多い外国籍の住民はフィンランド人。嬉しかったでしょうね、スウェーデンに長く住むフィンランドの人たちは!

日本でも若い世代には「よくわからないから支持する人が多い方に投票しておこう」という人がいることを取材した記事を読みましたが(「なぜ若者の政権支持率は高いのか? 学生との対話で見えた、独特の政治感覚」)、それは残念すぎる。こんなスウェーデンのような政党選びを助けてくれるクイズが多くの人の手の届くところにあればいいのになぁ! と思います。クイズをつくるのはかなり難しそうですが、期待してますよ、日本のメディアの皆さん!

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カボニュー・レストラン〈今週のスウェ推し〉

コロナでほとんど外食もしてませんでしたが、先日久しぶりに行った先のレストランのメニューに「110%カーボン・オフセットしています」の説明が。

こちらはヨーテボリ発の取り分けスタイルの中華のDubbel Dubbleのルンドのお店
こちらはヨーテボリ発の取り分けスタイルの中華のDubbel Dubbleのルンドのお店

さらには魚はMSC認証でえびはASC認証。フランス産の鴨以外はスウェーデンの国産肉を使い、ダンプリングはスウェーデンのオーガニック小麦粉から作ってます、との説明も。

全部食べたら動けなくなるほどのボリュームだったけど
全部食べたら動けなくなるほどのボリュームだったけど

以前からスーパーで食材を選ぶ時はいろいろ産地や有機栽培モノであるかどうかなどが選べるのに、レストランで使われている食材はそれに比べて透明性が低いなぁ、と思っていたので、この流れは大歓迎。

ただし、レストランがカーボン・オフセットやカーボン・ニュートラルを謳うには、どの数字とどの数字を比べているかの、私たちはすぐにはわかりにくい。しかし第一歩として、こんな記述のあるメニューを初めて手にして、なにかが変わってきているように思います。

www.table-source.jp

こんなレストランをどう呼んだらいいのか、そのうちに愛称のようなものもできてくると思いますが、とりあえず今日のところは「カボニュー、カボオフ・レストラン」とでも呼んでおきましょうか?

そういえば、この間買ったポテトチップスも化石燃料不使用を掲げておりました。有機栽培の認証マークじゃないけど、このあたりもそのうちに第三者機関によるカボオフやカボニュー、Non-Fossilの食品への認証マークもでてきたりするのでしょうか?

化石燃料を使っていないからといって、ポテチが突然ヘルシーであなたの体にやさしい食べ物になったわけではないので、ご注意ください
化石燃料を使っていないからといって、ポテチが突然ヘルシーであなたの体にやさしい食べ物になったわけではないので、ご注意ください
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では、また来週!

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