男のmetoo・アイスホッケー界の闇
swelog weekend nr 33
〈今週のトピック〉 男のmetoo・アイスホッケー界の闇
〈今週のブログ記事〉 クリスマスにむけてコロナはどうなる
〈今週のスウェ推し〉 古い車体にモダンな内装・新X2000
男のmetoo〈今週のトピック〉
エリック・グランクヴィストはトップレベルのアイスホッケー選手として活躍した後、コーチとしてもキャリアを重ね、今はアメリカのNHLホッケーリーグの試合やスウェーデンの試合の実況中継で解説者を務める。
そんな彼が、これまでは封印してきた自身の深い心の傷に気がついたのは、NHLの選手が2010年にコーチから受けていた性的虐待とそれを隠蔽しようとしたシカゴ・ブラックホークスの事件が明るみにでたことを、グランクヴィスト自身が出演していた番組で報じた時だった。
その番組でNHLのニュースに対する異常なほどの嫌悪感を隠さなかった彼は、その数日後、ポッドキャストで30年前に自身に起きた悪夢を話すことを収録の最中に決めた。
当時18歳で前途有望だと見られていたグランクィビストは、上位リーグへの昇格ポストを得たタイミングで、年長の選手からその後の彼の人生に大きな影を落とすことになったひどい仕打ちを受ける。
……ロッカールームに残っていた数名の年長の選手は、マッサージ用のベンチをシャワールームに運び込み、私は丸裸にされてペニスにスケート靴の紐を強く縛り付けられ、抵抗しようとすると紐を強く引っ張られた。その後は体と頭の毛のすべてを剃り落とされた……
ポッドキャストで、そう話し終わった現在49歳のグランクヴィストは泣き崩れたが、番組が公開されると、数千通のメールやショートメッセージ、それにSNSを通じて、嵐のような反響が返ってきた。彼と同様に30年前に同じ目にあったと話す人もあれば、20年前、10年前、そしてまさに今も同じような目にあっている若い選手もいた。
#VågaPrata expressen.se/sport/hockey/p… ”Pågår definitivt inkilningar i dag" Tidigare hockeystjärnor vittnar om inkilningar som gett men www.expressen.se
悲しいことに、この病的な構造的な問題や起こったことを口外しない文化が未だにアイスホッケーの一部のクラブチームで、いじめ、屈辱的な蔑み、そして虐待とともに支配していることを証言するメッセージを、多くの選手や保護者から受け取った。力を合わせればこの状況は変化できる #話す勇気を
30年前に屈辱的な暴行を受けた時にグランクヴィストは起こったことを誰にも話さないことを選んだ。それは周りのチームメイトも同様に被害者でありながら加害者であり、またこの暴行は新人の通過儀礼のようなものだと多くの人が考えていたためであった。親に話すと、アイスホッケーのキャリアが閉ざされてしまうのではないかとも彼は考えていた。
グランクヴィストが生き延びるためにとった戦略は、元気で明るく楽しくやっていると(自分にも)周囲にも思わせることだったが、彼はその後、自分の感情を紛らわすためにアルコールに逃げ、依存症になった(今は飲酒はやめている)。
また依存症や精神的な落ち込みを克服するために何年も通ったセラピーでも、自身の心の問題は、新生児の際に入れられた保育器や青年期における父親の不在が要因であるかのように理解しようとし、18歳の時の暴行事件ついてはセラピーでも口にしなかったとも振り返る。
今、グランクヴィストは、アイスホッケー界だけに限らず他の多くのスポーツ分野でも同様の非道が繰り返される構造的な問題の解決を目指し、これからの若者に自分と同じ道をたどってほしくないと、いじめや暴行、虐待に対して口を閉ざすのではなく、みんなで勇気を持って口に出すことを目指す活動に注力すると話している。
彼のmetoo行動は、スウェーデンアイスホッケー連盟からは歓迎されないのではと考えていたが、意外にも連盟からもこの悪しき慣習の撲滅のために力を貸してほしいと声がかかったという。
虐待されても暴行されても、それはさらに強い「男」を作るための通過儀礼というようなつまらない慣習はもちろんいらない。19日の金曜日の「国際男性デー」と同じタイミングでこのスウェーデンアイスホッケー界のmetooが取り沙汰されているのはなにかの偶然だろうか? (「男らしさの箱」から出るには 「男性デー」生きづらさと向き合う・毎日新聞)
スウェーデンのスポーツ界でいじめや虐待を受けた人をサポートする団体は増えている。
Inte ensam aldrig glömd (スポーツ界に限らず性的虐待を受けたり精神的な問題を抱える子供、若者や成人を支援)
日本でも日本スポーツ協会が「スポーツにおける暴力行為等相談窓口」を設けているが、解説のページを読むと加害者をはっきり特定しないと通報できないことがわかる。そうすると声をあげるハードルは高くなり、かつ個人の問題以前のシステマティックな構造の解決は難しくなる。このことはスウェーデンの(女性の)metooを、ブログで取り上げたときにも指摘されていたのでリンクを張っておきます。
#VågaPrata #話す勇気を !
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クリスマスに向けてコロナはどうなる?〈今週のブログ記事〉
今週はグラスゴーのCOP26の話題から、ヨーロッパ各国で広がっているコロナの話題へと重心が移って、また取り上げなかったけど、新しい首相の選出に関わるものも多かった。来週にはようやく決まりそう!
他に注目を浴びるセカンドハンド品や、鶏肉の持続可能性の話題など。
古い車体にモダンな内装・新X2000〈今週のスウェ推し〉
Nya X2000はまずはヨーテボリとストックホルムの間で運行
乗り鉄な私は日本の新幹線も好きだが、スウェーデンのX2000も大好きだ。ストックホルム、ヨーテボリ、マルメなどのスウェーデンの主だった都市を結ぶX2000は、JRの料金体系とは異なり、事前に計画して予約すると1等車でもかなり安くチケットを買うことができるのも気に入っている。
しかし日本では新しい型の新幹線が次々と投入されるのに比べて、X2000は現行の車両が登場してからも20年近く経ち、車内は古臭さは感じないものの、ちょっとくたびれてきていた。
今月、万を期して16日にストックホルムとヨーテボリの区間で、古い車体に新しい内装に駆動や信号システムを施した新X2000がお目見え。これまで使われていた車両の外枠はそのままで、内装と運転関連システムを現在のニーズとデザインに合わせて一から設計。社内は明るく快適になると同時に、車体をリサイクルすることで、5000トン以上のステンレススチールを節約した。
レッドドットデサイン賞を受賞したインテリアはこれまでと比較してぐっと明るい
デサインについては折り紙つきで2020年のレッドドットデサイン賞を受賞している。またこれまで評判のよろしくなかったWifi環境も改善された👍
運営会社SJのCEOが「世界で最もサステイナブルな列車のひとつ」と自慢するこの古くて新しいX2000。新しい列車を購入するのは簡単だが、SJのような企業が率先してリサイクルなど別の道を選択することは大きな意味があると判断したという。
一連の新X2000の取り組みは、ビジネス客が飛行機ではなく列車を選んでくれることを狙って設計されている。スウェーデンの個人客は既に飛行機から列車へと戻ってきているが、ビジネス客はこれから。新X2000は静かで、また折りたたみ式のテーブルもラップトップPCをおいてもしっかり安定することを重要視して設計されている。
電車の遅れもこれまでより改善されるとのことで、よいではないか。リサイクルは合計36のX2000で実施されるそうなので、あなたが次に乗るX2000もその1台になるかも?
ストックホルムとマルメ間にこの新X2000がやってくるのはもう少し先になりそうだが、早く乗ってみたいよ。でもこれで、ますます安いチケットは早く売り切れそう……
では、また来週!
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