コロナ監査継続中

2020年の5月に政府のコロナ対策を独立した機関が検証することが決定され、同年12月末には「スウェーデンは高齢者をコロナから守ることに失敗した」とまとめられた第一次報告書が提出された。今週コロナ監査委員会が第二次報告書をまとめたが、さて、その中身は?
ブロムベリひろみ
2021.10.31
誰でも

swelog weekend nr 30

〈今週のトピック〉  コロナ監査継続中
〈今週のブログ記事〉 COP26とSNSと冬の健康
〈今週のスウェ推し〉 世界を狙うNick's

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コロナ監査継続中〈今週のトピック〉

はやくも2020年の5月には政府のコロナ対策を独立した機関が検証することが決定され、同年12月末には「スウェーデンは高齢者をコロナから守ることに失敗した」とまとめられた第一次報告書がコロナ監査委員会から提出された。

第一次報告書

第一次報告書での委員会からの報告は非常に厳しいもので、重大で明らかな失敗であり、対策は遅すぎ、また高齢者向けの各種施設はパンデミックを想定した準備がまったくをもって不十分であったとまとめられていた。

そしてこのような結果を引き起こしたのはコロナ禍以前から存在し、また長らく指摘され続けてきた高齢者福祉の構造的欠陥そのものであると言い切り、その最も大きな責任を追うのは、問題があることを知りながら対策をしてこなかった現政権とこれまでの政権にあるとした。

具体的には、高齢者福祉を提供する責任を担うコミューンがパンデミックを想定してどのような対策や準備すればいいのかについて国からの方針が示されておらず、また感染が広がった際には官庁からの動きも後手に回ったという点だ。

監査委員会が示した改善策としては、高齢者施設で時給で働く不安定な雇用を減らし、また医師や看護師などのきちんとした医療知識をもった人をより多く関与させ、それを支える医療機材などもしっかりと設備することなどだった。

第二次報告書

今週発表された第二次報告書でも「スウェーデンのパンデミックへの対応は何もかもが遅すぎ、とても当然満たしているべき標準に達していない」と辛辣な批判となった。

2020年2月〜3月のスポーツ休暇でイタリアやオーストリアへスキーに出かけた旅行者から広がった新型コロナは、スウェーデン国内で急激に広がり、3月に入って公衆衛生庁から毎日報告されていた感染者数は実際にはもっと劇的な感染拡大となっていた可能性が高いと監査委員会は指摘する。

「責任と費用分担をめぐる議論が進まず、第一波が落ち着くまで大規模なPCR検査の体制を確立することができなかったのは失敗だったとの評価しかできない」と監査委員会の厳しい声は続く。

その中でも医療機関は迅速にコロナ対応のできる体制へと移行し、コロナ患者への対応と集中治療室でのケアを行うことができたが、これは医療従事者の献身的な働きによるところが大きいとした。

コロナ監査委員会は、2020年の春にロックダウンや厳しい行動規制をとった他の国々とは異なり、スウェーデンは独自の道を選んだことに言及したが、これが適切な選択だったのかどうか、その最終的な評価は2022年2月に予定されている最終報告書でまとめられる予定だ。

以下、今回の第二報告書の7つの論点を並べてみよう。

1.全般的に対応策に時間がかかりすぎた。また感染対策は不十分で感染拡大を抑えることはできなかった。
2.スウェーデンのアプローチは大がかかりな規制よりも、個々人の自発的な責任に基づく行動によるものだった。
3.保護具など、パンデミックへの準備はまったく不十分だった。
4.感染症管理に管理に関する法律は十分でなく、今もそうである。現行法では今後も深刻な感染症やパンデミックには対応できない。政府に施設閉鎖などの権限をあたえる暫定法はできたが、それも遅すぎた。
5.感染症対策の責任の所在が分断されており、誰が全体の責任を追うのかが不明確6. 医療機関は新型コロナへの対応体制を短期間のうちに確立した。これは多くの医療従事者への多大な負担と、計画されていた手術などのキャンセルの上になりたっている。この影響はこれから長らく続くだろう。
7.いくつかの分野でデータが不足しており、パンデミックの進行や管理を適切に評価することが難しくなっている。

スウェーデンでは 明日から冬時間。去年はクリスマスにかけて猛烈な第二波がやってきた。今年はワクチンも行き渡ったので、どうなるかわからないけれども、今のところ感染状況は落ち着いており、人々のコロナ対策監査への関心も薄れてきているように思う。

また今回のパンデミック対策の表の顔であったステファン・ロベーン首相はまもなく退任するし、ヨハン・カールソン公衆衛生庁長官も先日定年退職したばかり。最終報告書がでる来年の2月にはみんなコロナのことなんてちょっと忘れてしまい、責任の追求も曖昧になってしまう? ようになるのはいいのか、悪いのか? 少なくとも監査委員会がこれまでに指摘した具体的な改善策はちゃんと実施されるとよいのですが、さて?

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COP26とSNSと冬の健康〈今週のブログ記事〉

今日からグラスゴーでCOP26開催ということで、やはり今週も関連ニュースが多かった。しかしスウェーデンが目標を達成できないくらいなら、達成できる国はほとんどないのだろうか? ロックストロームによると「COP26は最後のチャンス」。これを逃がすと本当にどうなるのか?

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そしてあいかわらずSNSの影響に関するニュースも多い。

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そして冬には冬の健康が。本格的な寒冷浴シーズンの到来! ということで、去年はまったく寒冷浴場に出かけていなかった私も、今シーズンはガンガン行きたいと思います!

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世界を狙うNick's〈今週のスウェ推し〉

Nick
Nick'sは今結構な費用をかけてマーケティングを絶賛展開中のようで、これはルンドの街中にあった広告

「最大のライバルはBen&Jerry'sだが、我々のアイスクリームはBen&Jerry'sに比べてカロリーは4分の1、砂糖は使用していない」と話すのは、今回の投資ラウンドで8億クローナ(約105億円)以上の資金を獲得したスウェーデン発のアイスクリームやプロテインバーのブランドNick'sのCEO。

2013年設立のNick'sは、白樺から作られたキシリトールなど低カロリーの甘味料を使用したアイスクリームやプロテインバーなどを、目下世界16のマーケットで展開している。目指すのは健康とサステイナビリティの両面で妥協しない菓子・スナック業界のグローバルリーダーになることだ。

www.instagram.com

共同創業者である二クラス・ルトゥマンが糖尿病と診断されたことがきっかけでできたこのブランド。昨年はアメリカ市場進出に多額の投資を行い、現在既にアメリカの6700の店舗で取り扱いがある。

アイスクリームはBen&Jerry'sと同じく少し高めだが、血糖値は上がらないのにこってり濃厚。ヴィーガン用のミルクプロテインの特許を持つ企業と独占契約を結ぶなど、来年以降もユニークな新製品を世の中に出していく予定だとか。スウェーデンはもちろんアメリカやヨーロッパ各国で売られているそうなので見かけたらぜひためしてみてくださいー。日本に来る日も近い?

それにしてもキシリトールって白樺からどうやってつくるんでしたっけ? と検索したらこういう記述がありました。

キシリトールは糖アルコールの一種で、プラムやイチゴ、カリフラワー等、植物界に広く分布しています。ただし、その量はごく微量で、通常商品として流通しているものは同じく白樺やトウモロコシの芯など、植物の中に含まれる多糖類であるキシラン・ヘミセルロースを酸で加水分解して得られるキシロースを水素添加して工業的に生産されているものです。出始めの頃、よく「白樺から抽出した甘味料」などという表現がされたことがありましたが、厳密にいえば「白樺から抽出した原料 (キシラン) からつくられた甘味料」ということになります。甘味度は砂糖の60%~75%で、口中で清涼感があるのが特徴です。
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そして今週はELLEで『グレタ ひとりぼっちの挑戦』の映画レビューを書かせていただいきました。この映画まだ未見の方はぜひ!

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では、また来週!

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