スウェーデンの民主主義とアフガニスタン

今、スウェーデンでは「民主主義の100年を祝う!」という「女性が参政権を得て投票できるようになり、それに合わせて女性の国会議員も誕生した、という一連の流れから100年!」を祝う企画展を展開していますが、今回のアフガニスタンの状況の激変で、アフガニスタンの、そしてスウェーデンの民主主義というものを考えずにはいられませんでした
ブロムベリひろみ
2021.08.22
誰でも

swelog weekend nr20 
〈今週のブログ記事〉コロナと気候危機と(アフガニスタン)
〈今週のテーマ〉  スウェーデンの民主主義とアフガニスタン
〈今週のスウェ推し〉Cervera Vintage

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火曜日の夕方、街まで散歩に出ると、ルンドの大聖堂の前、降りしきる雨の中、大きなアフガニスタンの旗を持った20名ほどの人たちが「アフガニスタンに自由を、解放を!」と悲痛な声を上げていました。大聖堂の正面に立つわけでもなく中途半端な様子で、しかも雨で人通りも少なく足早に立ち去る人ばかりで、立ち止まってこの人たちの叫びを受け止める人もいない中、こうでもしないと居ても立っても居られないのだ、という激しさで「アフガニスタン、自由、」という言葉を濡れそぼって繰り返す人たち。

その声のあまりの切実さに、道の反対側で足をとめた私は、一見した時とは違って、実は私と同じ様に少し離れたところからじっと見つめる人が、ぽつり、ぽつりといることにも気がつきました。

こういう時に、つらい気持ちは伝わってきてます、何もできないけどあなたたちの気持ちをなんとかして支えたいと思います、ということをどの様にして伝えればいいのでしょうか。以心伝心という言葉を信じ、その人たちのことを強く思うことが巡り巡って何らかの力になることを祈りつつ、とりあえずは、これからますます迫害を受けることが予想され、避難することを強いられるであろう女性や子供を支援すると掲げるUNHCRへ募金しました。UNHCRの日本語サイトはこちらから。

コロナと気候危機と(アフガニスタン)〈今週のブログ〉

swelogはスウェーデンのニュースを取り上げるブログなので、この一週間に書いた記事を振り返ってみれば、今週は見事に気候危機とコロナに関するものしか扱いませんでしたが、頭の中というか、常に心にずしりとあったのはアフガニスタンの情勢のことだったように思います。

そして今はまだ国外のニュースとして扱われているアフガニスタンに関するニュースは、この先まもなくスウェーデンの国内政治、ひいては来年の国政選挙に大きく影響し、これからスウェーデンが向かう方向へ多大な影響を与えることは明らか。

今週書こうと予定していた別のテーマもあったのですが、今日はその予定を変更してスウェーデンの民主主義とアフガニスタンについて書こうと思います。

とりあえず今週のニュースをおさらいしておくと、コロナ関連のニュースが以下の2本。夏休みが終わり学校が始まって、通勤する人も以前より増えるだろうという見込みの中、これからの感染状況がちょっと心配です。

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 そして気候危機に関連するようなニュースが4本も、という結果に。

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スウェーデンとアフガニスタン〈今週のテーマ〉

民主主義の祝宴と挫折

今週取り上げようと思っていたのは、目下スウェーデンで開催中の「民主主義の100年を祝う!」という、スウェーデン国会の主催で、全国で巡回展も開催中の「スウェーデンで女性が参政権を得て投票できるようになり、それに合わせて女性の国会議員も誕生した」という一連の流れから、ちょうど100年経ったことを祝う企画展のことでした。

今回のレターを「民主主義100年の祝宴」と名付けようと思っていた矢先の「民主主義の挫折」とでも呼べそうな、このアフガニスタンでのタリバンの復権。

アフガニスタンにはアメリカやNATOと協力する形で、2001年からISAF(国際治安支援部隊)への兵力の提供に始まり、アフガニスタン政府の治安維持を支援することを任務として、20年の長きに渡りスウェーデンは兵士を派遣し続けてきました。

しかしトランプが決定したアメリカ軍の撤退を受ける形で、今年4月にはスウェーデン軍もアフガニスタンからの撤退を決定。スウェーデン軍の在アフガニスタン中にスウェーデンの5人の軍人が現地で命を落としています。

5月にスウェーデン軍最後の兵士がアフガニスタンから帰還した際には、フルトクヴィスト防衛大臣が、貢献した兵士へのメダル授与の記念式典を実施し「(現地で働いた兵士の数(計約7000名)や亡くなった人の数など)大きな対価を払ったが、アフガニスタンの発展に貢献した」と発言していました。今回の劇的な展開を受けて、スウェーデン政府は改めて、これまでのアフガニスタンでの活動の意義を評価する調査委員会を設立することを決めています。

アフガニスタンの今とスウェーデンのこの先

アメリカのバイデン大統領は、カブール陥落後の演説の中で「アフガニスタンでの任務は統一された中央集権的な民主主義を生み出すことではなかった」と述べ、あくまでもテロ組織によるアメリカへの攻撃を防ぐことが目的だったと強調しましたが、今回、アフガニスタンで民主主義政権を維持することができなかったことで挫折を感じている人は、スウェーデンでは多いはずです。この20年、スウェーデンがやってきたことは何のためだったのだろうかと。

さらには、アフガニスタンのこの状況は、この先スウェーデンがどう舵をとっていくのかに直接大きく関わってくることは確実です。

2015年から2016年にかけてのシリアを中心とした難民危機では、欧州各地で「移民拒否」を掲げる極右政党の台頭を引き起こし、英国ではブレクジットを後押ししました。スウェーデンへは16万人の難民が押し寄せ、続く2018年の選挙では、以前はまともな政党として扱われていなかった極右政党のスウェーデン民主党が、18 %近くの票を得るに至りました。

また2015年の難民危機では、ドイツのメルケル首相が早々に難民を多く受けいるれることを宣言し、EU内での議論を力強くリード。EUがトルコに資金援助して難民のアブソーバー、もしくは防波堤となってもらう合意も取り付けましたが、今回は一体どうなるのか?

デンマークは今回のアフガニスタンの展開を待たずして、早々にこれまでより、より厳格な難民の受け入れ制限体制を築きつつありますが、スウェーデンはどうするのでしょうか? デンマークの厳しい移民制限に、私も以前はずいぶんと反発する感情を抱いたものですが、だんだん、こんな現実的な本音ぶっちゃけのやり方の方がうまくいくのかもしれない、と考え始めていたりもします。

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私にとってこの先の最悪のシナリオは、難民を受け入れるどころか、さらには今いる難民、移民もさっさと出ていってくれのスウェーデン民主党が、このアフガニスタン情勢を背景に一層支持をとりつけて、来年の選挙でも大躍進するというものです。

その時、これまでリベラルな世界観で、すべての人に平等に与えられた権利と民主主義すばらしさを標榜し、そのポリコレ臭が時々鼻につくことはあっても、世界中から一定の称賛と評価を得てきたスウェーデンは、何を高らかに歌い上げる国になるのだろうか? まぁ、選挙でスウェーデン民主党が勝っても、それは民主主義の結果であることに変わりはないのですが。

民主主義とは? そして国家と暴力

民主主義とは何なのか? この夏はたくさん本を読みましたが、一番衝撃的だったのが、日本学術会議の問題でも注目を集めた東大の宇野重規教授の、『民主主義とは何か』のこの一節でした。

講演の冒頭でウェーバーは、国家とは「特定の領域の内部」で「正当な物理的暴力行使の独占を(実行的に)要求する人間共同体」(『職業としての政治』)であるという有名な国家の定義を示しています。国家権力の最終的な基礎として、物理的な暴力行使があることは間違いありません。国家の内部に、その命令に服さない暴力集団がある場合、その国家は領域を実効的に支配していないことになるからです。もちろん、この場合、暴力は暴力でも「正当な」という限定があるのが重要です。とはいえ、国家を論じるにあたって、まずは暴力を強調する点にぎょっとする人もいるでしょう。
『民主主義とは何か』宇野重規、講談社現代新書より

まさに私がその「暴力を強調する点にぎょっとした人」なのですが、国の秩序を守るには、それを守らない勢力に対して軍や警察機関などが「正当な暴力」をふるうことがどうしても必要となってくるというのは、少し考えると当然のことと理解できます。

だとすれば国家権力を形成する人たちが振るう暴力が正当なものであるかどうか、それを信頼できるかどうかが、私たちにとって最も大切なものになってくるように思います。

その意味で政治や政治家にとっては、時々の政策の優秀さや調整能力といったことも重要だとは思いますが、その人の、その政党の、振るう暴力なら納得できるという信頼が、私たちにとって一番大切なものだと考えることはおかしいでしょうか? 

もちろん何を信頼するかは人によって違いますし、なんといってもそういう国家を自分たちで選んでつくることのできる民主主義のスウェーデンや日本といった国に住む人は恵まれています。

アフガニスタンの情勢の変化で、スウェーデンでの来年の選挙はますます混沌としそうですが、日本での衆議院選挙はまさに、すぐそこ。この政党が、この政治家が、やむを得なく暴力を使わなくてはいけないことが仮にあったとしても、その判断を信頼できる、という視点で、政治を、選挙を、考えてみるのはどうでしょうか。そんな大切なことを選ぶこともできない、アフガニスタンの人たちに思いを馳せながら。

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Cervera Vintage〈今週のスウェ推し〉

ひとまわり小さいサイズも買いたいと思っていたデンマークのフライパンScanpanが30%になってることを知り、久しぶりに食器やインテリア用品の小売大手のCerveraのサイトを覗いてみました。お目当てのフライパンを無事ゲットした後、サイトちらっと眺めていると「Vintage」のページが! なにこれ?

人気のブランドのヴィンテージ品も売るようになったCervera
人気のブランドのヴィンテージ品も売るようになったCervera

サイト自身の説明によると「キッチンやダイニングで活躍する最高品質のヴィンテージアイテムを買取り、再販しています」ということのよう。

日本でもメルカリが大人気なように、スウェーデンでもフリマサイトはこれまでも人気でしたが、最近目立つのは、新品を扱うショップが取り扱い商品関連のセカンドハンドものを一緒に売る方式

私が一番最初に気がついたのはオーガニックジーンズのNudieで、しばらく前に大手百貨店のÅhlensの人気ブランドのセカンドハンドのサイができていたことを知った時にも軽い驚きがありました。

そして今回は、人気ブランドの食器やガラス器のヴィンテージ物を新品を販売するサイトと並行で扱うCerveraのサイト。2020年9月にオープンしたこのVintageサイトは専門店が扱うヴィンテージということで、個人間のフリマサイトとは違って、品質と価格、そして発送などの取り扱いに一定の信頼がおけるところがポイントでしょうか。

新しいモノや洋服をバンバン買うことは気候危機にふさわしい行動ではなく、罪悪感を伴うものとなった今、新品と一緒に取り扱い関連商品のヴィンテージものも並行で販売するこの形は、今後も様々な分野で増えそうですね。あ、元祖は自動車販売店だったのか? それはともかく、1900年初頭の品のこのザリガニの容れ物、すてきですね🦞 (いえ、うなずいていただかなくて大丈夫です😅)

www.cervera.se
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