これからの自転車通勤

最寄りの駅までは自転車を使ったり、また近くに仕事場のある運のよい人には、日本でもお馴染みの自転車通勤。私の住むスウェーデンの小さな街でも、市内の移動には自転車を使う人は多い。今、このあたりの自治体が力を入れているのが「スーパーサイクルロード」構想。これまで自動車での移動が大半だった、郊外からの通勤者のための自転車の高速道路整備計画だ。
ブロムベリひろみ 2022.01.30
誰でも

swelog weekend nr 43

〈今週のトピック〉 これからの自転車通勤 
〈今週のブログ記事〉オミクロンとセムラの日々
〈今週のスウェ推し〉ベルイマンを超える映画監督、ヤン・トロエル 

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これからの自転車通勤〈今週のトピック〉

スウェーデンに引越してきて、毎朝、毎夕20キロメートルもの距離を、自転車を漕いで通勤する人がいることを初めて知った時には、腰を抜かすほど驚いた。最近は、朝、職場でシャワーを浴びたばかりらしい、やけにすっきりした同僚に会って、その人が早朝の会議の前に既に15キロも自転車に乗ってきたと知っても(そして、その日が仮に土砂降りの日であったりしても)あまり驚かなくなってきた。

自転車通勤を選ぶ人にとっては、どうせしないといけない移動の時間に体も使えるし、環境にもいいなどいいことばかり。公共交通機関の時刻表に合わせる必要もなく、自分で自由に移動できる身軽さがたまらないという人も多い。コロナでますます自転車通勤の人気は高まり、スウェーデンは国として、自転車利用を増やすという目標もある。

私の住むスウェーデン最南端のスコーネ地方は、風は強いが、地面は平らだ。スウェーデンの他の地方と比べると、冬に道が凍ったり雪で覆われたりすることも少なく、やる気さえあれば一年を通して自転車通勤することができる。

スコーネ地方の行政機関リージョン・スコーネが、国の交通庁と共同で目下力を入れているのが「スーパーサイクルロード(Supercykelvägar)構想」だ。市町村に当たるコミューンの枠を超えて自転車で移動する人のための、快適な自転車専用高速レーンの整備計画だ。

郊外から街へ、またマルメとルンドなど大きな市街地の間を繋げる高速自転車道が、スーパーサイクルロード。リージョンスコーネの資料より

郊外から街へ、またマルメとルンドなど大きな市街地の間を繋げる高速自転車道が、スーパーサイクルロード。リージョンスコーネの資料より

リージョン・スコーネが目指すのは、地域内の住民は、通勤などの移動をどの交通手段を使った場合でもスムーズにできるようにすること。スコーネ地方の住民の半数程度は、通勤に自転車を使っても30分以内で移動できることがわかっている。

現在、市街地での自転車専用路やレーンは整備されていることが多いが、コミューンとコミューンを繋ぐ自転車用路には、街灯のない暗い場所が多かったり、最近は突発的な大雨で大きな水たまりができて、簡単には通れなくなったりするといった不便なことも頻発している。

去年の夏思い立って(コロナもあって)隣町のKävlingeの友人の家まで13キロを自転車で移動した。確かにこの道は自転車専用道路でもなければ、街灯もない!

去年の夏思い立って(コロナもあって)隣町のKävlingeの友人の家まで13キロを自転車で移動した。確かにこの道は自転車専用道路でもなければ、街灯もない!

リージョン・スコーネはこの夏以降、地域内のコミューンと共同で、多くの費用を投入してスーパーサイクルロードの交通インフラを整備していく予定だ。働く人の多いマルメやルンドまで自転車でそれぞれ40分、30分程度で通うことのできる人気の郊外住宅地Lommaコミューンは、2023年から2025年にかけてスーパーサイクルロードのために1000万クローナ(約1億2500万円)の予算を確保した。

私の住むルンド市では市街地での移動に自転車を使う人は43%だが、市街地と郊外を結ぶ移動では、車の割合が増加して自転車での移動する人の割合は28%に落ちてしまう(2019年)。スーパーサイクルロードが目指すのは、このギャプを埋めていくことで、構想は、まったく新しい高速道を作るのではなく、今あるインフラを整備していくことを基本とする。

リージョンスコーネの資料には、スーパーサイクルロード先進国としてデンマーク、オランダ、イギリスの例が挙げられており、これらの国では、レジャーとしてではなく通勤など日常の移動手段として、都市間の自転車移動の比率を上げることに成功したことが説明されている。スウェーデン全体では自転車での移動が難しい地方も多いが、せめて南のスコーネ地方では近隣諸国であるデンマークやオランダと並びたいところだ。がんばれ、スコーネ!

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自転車で通勤すると、ガソリンも電気もいらないし、いいよね! と夫に話すと、「腹が減るだろ!」との返事が帰ってきた。どんだけ、食べるつもりだ!

(自転車関連記事では、こちらもどうぞ👇。私が唯一持っている株式がHövding。でもHövdingは今、歯ブラシやさんから買収かかってるのだ。私は売らないぞ😤)

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オミクロンとセムラの日々〈今週のブログ記事〉

なんでもオミクロンは、オミクロン自体の症状は大したことがない人が多くても、既往症のある人の症状を悪化させるとかで、感染した子どもの既往症が悪化し、入院しなければならない例が増えていると、昨日のダーゲンスニュヘテルが報じていた。

このまま普通の風邪みたいになってくれればいいと思うものの、これではなかなか気が抜けない。カロリンスカではこんな子どもに向けた集中治療室の病床を増やしているそうだ。

改めて今週使った写真をみると、屋内の写真ばっかり。読み物関連の写真が3枚、映画が1つ、そしてセムラ関係のが2枚もあったりして。どういう生活をしていたのかが、如実にあらわれている。体型も丸々とまるでセムラのようになりつつあるような……

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ベルイマンを超える映画監督ヤン・トロエル〈今週のスウェ推し〉

今週はゴールデンビートル賞の発表もあったし(上の「ファッキン家父長制な映画」のブログ記事、読んでね😉)、昨日からヨーテボリ映画祭も始まったということで、こちらのコーナーでも映画の話題を。

スウェーデンを代表する映画監督としては、世界の巨匠として名高いイングマール・ベルイマンがいるが、そのベルイマン自身も、そしてベルイマンと長い間カップルで、往年のスウェーデン映画を代表する俳優リブ・ウルマンが「一番の監督はイングマールなんかじゃなくて、だんぜんヤンよ!」と、超太鼓判を押すのが、スウェーデン最南端の小さな港町で暮らす現在90才のヤン・トロエル。

ヤン・トロエルはクリント・イーストウッドとひとつ違いの現在90歳

ヤン・トロエルはクリント・イーストウッドとひとつ違いの現在90歳

私が大晦日に見た新作映画『Utvandrare(移民者たち)』を1972年、1973年に2本の映画として監督したのがヤン・トロエルだ。その際には米アカデミー賞の外国語映画賞や、またそれとは別に、米アカデミー賞の作品、監督、脚本賞などにノミネートされている。

スウェーデンのゴールデン・ビートル賞ではロイ・アンダーソンと並んで個人最多の4つの賞(監督賞2回に撮影賞など)を受賞している他、監督した作品のうち5作品がゴールデンビートル賞の作品賞を獲得しているのがヤン・トロエルだ。

トロエルの映画は残念ながら日本ではほとんど上映されていない。(2000年以降の映画はともかく、それまでの映画の多くは上映時間が3時間近いものが多く、長めだ。でも観ているとあっという間だけど)。

今、トロエルの住むスウェーデン南端のトルレボリコミューンのミュージアムでは、トロエルの大回顧展を開催中。展示はスウェーデン語だが、今年の8月22日まで開催予定。期間中はミュージアム併設の映画館で彼の作品の上映も行っている。

代表作である『移民者たち』からマックス・フォン・シドーのシーンの再現と、リブ・ウルマンが当時の撮影について語るビデオも上映

代表作である『移民者たち』からマックス・フォン・シドーのシーンの再現と、リブ・ウルマンが当時の撮影について語るビデオも上映

脚本は共同で書くことはあっても、撮影、監督、そして編集作業のすべてを1人で行うことの多かったトロエル。トロエルが捉える風景はどこまでも美しくもかつ寂しく、抑えたリアリスティックな演技の俳優たちを、クローズアップではなく俯瞰で撮ることも多いが、それが感情をより際立たせる。

ベルイマンの映画は、映画好きとしては抑えておかなくては、という感じで私も折につけみていたが(加えてスウェーデンに来てからは、毎年クリスマス前には『ファニーとアレクサンダー』をテレビやSVT Playで(半ば強制的に見るように?)やってるし)、作品として面白いとは思うものの、正直そんなに惹かれたことはなかった(難解であるらしい『第七の封印』も、コメディか? 楽しい作品なだけではないか? と思ってしまうようなのが、私とベルイマンの関係だ)。

そんな私もトロエルの映画にはまさに心を奪われる。トロエルの最盛期の作品には、ベルイマン作品と同様、マックス・フォン・シドーを主演に起用した作品が多いが、このマックス・フォン・シドーが、またすべてのトロエル作品で素晴らしい。

今最高に大きなスクリーンで見たいのが、こちらもマックス・フォン・シドー主演の『技師アンドレの北極気球紀行(Ingenjör Andrées luftfärd)』(1982年)。北極点に気球で向かい戻ることはなかったが、後に日記などの遺品が凍結した氷の下から見つかった、<a href="https://en.wikipedia.org/wiki/Andr%C3%A9e%27s_Arctic_balloon_expedition">技師アンドレの氷の旅</a>を描く

今最高に大きなスクリーンで見たいのが、こちらもマックス・フォン・シドー主演の『技師アンドレの北極気球紀行(Ingenjör Andrées luftfärd)』(1982年)。北極点に気球で向かい戻ることはなかったが、後に日記などの遺品が凍結した氷の下から見つかった、技師アンドレの氷の旅を描く

これを読んでいる人が現時点では見ることのできない映画について、これ以上書くのはそろそろやめるが、可能な人はぜひ、トルレボリのミュージアムに足を運んでみてほしい。

私は今、すべてのトロエル作品を鑑賞するトロエル・チャレンジを実施中(参加者は私一人だが😊)。完走した暁には、ヤン・トロエルと彼の作品に捧げる日本語ファンサイトをオープンしたいと思っている。

それまで待てない人は、ぜひこちらの映画コラムもちょっと読んでみてほしい。コラムは「上」だけで終わっており「下」がないのが残念だが、きっと私が、続きは全部いつか書くから!

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ところで、私の『1月のアナログチャレンジ』は、これまでのところ無事経過し、ツイッターとはまったく縁のない一月を過ごした。ツイッターを情報源と考えていたが、購読しているニュースサイトや他のメディアや、ニュースレター😉からだけで、特に問題もなさそうだったので、おそらくツイッターをスクロールする生活にはもう戻らなくてもよさそうだ。

この一ヶ月、今までもより多く本も読めたし、映画も見たし、気になっていた壊れたモノたちの修理や修繕も多くこなせた。残念ながら、お稽古ごとはまだ始めることができていないけど、これまでのヨガとランニングに加えて、筋トレメニューを今一度しっかり日常に組み込んでみた。

アナログ生活万歳ヽ\(^o^)/

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では、また来週!

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