今週のブログ 2021.12.20~25

今週はどんな一週間でしたか?
いつもお送りしているトピック記事とスウェ推しは今週はお休みをいただき、この一週間のブログ記事を全文でお送りします。スウェーデンではこんなことがニュースになっていました。
ブロムベリひろみ 2021.12.26
誰でも
2021.12.25

2021.12.25

フィンランドのロヴァニエミやノルウェーのトロムソと並んで、北欧のオーロラ名所となったアビスコだが、20年ほど前は冬は訪れる人もなく、春から秋にかけてだけの観光地であった。

そのアビスコの冬を一変させたのは、2003年の冬にこの地にやってきて「オーロラ」と繰り返す、あまり英語の話せない1人の凍える日本人であったことを、関係者が取材で明らかにしていた。

2003年アビスコのツーリストステーションのマネージャーを務めていたプッテ・エビューさんは、当時冬の間は閉鎖されていたこの宿泊施設の切迫した経営危機を改善する使命を受けた。彼は9月から2月の間閉鎖されていた施設に移り住んで営業期間を長くする方法を模索することにした。

そんな中、11月のある日の夕方、訪れる人のないはずの玄関のドアがノックされた。訝しげにドアを開けたプッテさんの前に現れたのは、2メートルを超える長身の、革のコートを着た凍えた25歳くらいの日本人男性だった。

英語もほとんど話せなかったが、「オーロラ」という言葉を繰り返す。凍える彼にスープを差し出して、なんとか理解したところによると、この青年は東京からヘルシンキ、ロヴァニエミに飛び、バスでキルナへ移動し、そして列車でアビスコに到着。閉まっている暗くて寒いツーリストステーションの周囲をさまよっていたようだった。

Google翻訳もない時代で会話は難しかったが、理解できたのは、彼が日本語のサイトで「アビスコはオーロラを見るのに世界で最も適した場所である」と読んだらしきことだった。またその2ヶ月前に日本のテレビ局がアビスコからオーロラの生中継を行ったことも、彼の行動になんらかの影響を与えていたのかもしれない。

プッテさんはこの遠方から珍しい客のために、キャビンを開放して1週間宿泊させることにし、日本人はオーロラをたくさん見ることができ大喜びで帰っていった。

この出来事をきっかけにアビスコのツーリストステーションは、オーロラ観光に力を注ぐことになり、2005年から冬季の営業を開始した。その後のアビスコにおけるオーロラ観光産業の成功は、とどまるところを知らない。アイスホテルと協力体制を取って、日本でのマーケティングを集中的に行ったことが、当初の人気に火をつけた。

現在のアビスコは、世界中から観光客が集まるところになったが、それでもツーリストステーションは国立公園の真ん中に位置しており、ロヴァニエミなどに比べると観光地としての開発がそれほど進んでいない。マス・ツーリズムの波に乗っていないことが、これから観光業においてはおそらくより強力な優位点となり、ますます人々をひきつけるかもしれない。

さて、アビスコを一変させた日本人の青年はいったい誰だったのか? 休業中にやってきた言葉も通じない風変わりな客ということで、彼の名は宿泊記録にも登録されていない。2003年の11月にアビスコまで旅をした、2メートルの身長の43歳くらいの男性をご存知の人はぜひ連絡を!

2021.12.24

2021.12.24

クリスマスは心臓発作のリスクが高まる時だ。

スウェーデンでは毎年5000人以上の人が心臓発作で亡くなるが、クリスマス・イブ(今日だ!)には、心臓発作の数が通常の日に比べて40%近く増加する。

クリスマスに心臓発作を起こした人を対象にした調査によると、37%の人がいつもよりストレスを感じていたと回答し、26%は不安な気持ちだったという結果になった。同様の傾向は、イースターや夏至祭の時には見られない。クリスマスがいかに特別な時期であるかはこういう統計からもよくわかる。

最近ではサウナが心血管疾患や脳卒中のリスクを軽減することがわかってきていて、サウナ入浴を薬などの代わりに処方することを望む医師もいる。

スウェーデンでは、今、さまざまな疾患や心血管疾患の予防策として、ヨガやダンスなどの身体活動を医師が処方することができるが、これの流れにサウナも入れるように取り組んでいるのはスウェーデン・サウナアカデミーの理事で、ウプサラ大学の教授で医師でもあるハーンス・ヘッグルンド。

サウナはでは汗をかき、心臓の鼓動や呼吸も早まる。ホルモン系や神経系の動きも活発になる。要は運動をした時と同じことがサウナに入浴しただけで体に起こる。

2015年のフィンランドの研究ではサウナ入浴を週に4回(!)行う場合は、血圧をさげ、心血管疾患や脳相中のリスクを最大で50%低減するということがわかった。一般的に心血管疾患のリスクは、身体的活動により80%から90%低減できると理解されているそうだ。

クリスマスもそして年末年始も、ストレスを感じる前にサウナをどうぞ。

2021.12.23

2021.12.23

とはいっても、直接的には、今ベラルーシとポーランドの国境の森でひどい状況に置かれている難民の人たちの話ではなくて、今から200年前にスウェーデンを襲った飢餓と貧困からアメリカに渡った『移民者たち』の話だ。

スウェーデンは、今、移民や難民を多く受け入れていることでも世界の中でもかなりユニークな国だと思うが、19世紀後半、20世紀初期に国民の5分の1近くもの多くの人たちがアメリカなどへ移民していった歴史がある、という点でもかなりユニークだと思う。

そして、その時代を描いたスウェーデンを代表する、映画にもなった文学作品といえばヴィルヘルム・モーベリの一連の『移民』シリーズ

映画一作目である『Utvandrarna(「移民として出ていく者たち」の意。日本での公開時のタイトルは『移民者たち』)は、北欧を代表する俳優マックス・フォン・シドーとリブ・ウルマンの主演でヤン・トロルが監督して1971年に公開された。アカデミー賞の作品・監督・主演女優・脚色、さらに外国語作品でノミネートされた歴史に残る名作だ。

上にリンク貼った記事で書いたこの新しい『移民者たち』が、長い準備・製作期間を経て、このクリスマスから劇場公開される。よりよい暮らしを求めて新しい土地へと向かう人間の営みは今も昔も変わっていない。

監督のエリック・ポッペはこの映画の制作にあたり、新しくスウェーデンにやって来た移民たちにインタビューをして、祖国を離れた土地で生活を築いていくというのはどういうことかを理解しようと務めた。

人間はより安全な場所へ、よりよい生活ができそうな場所へと大移動を繰り返してここまでやってきた。ポッペはこの新しい『移民者たち』の中で「ホーム」となにかを探求したと話している。それは場所なのか? 関係性なのか? それとも家族の構成員なのか?

前作からちょうど50年のタイミングで発表されるこの映画、その大作ぶりは10年に1度のレベルと言われていて、公開前から既にスウェーデンのアカデミー賞であるゴールド・ビートル賞の7部門でノミネートされている。

しかし映画批評家の意見は、前作を超えることのない凡庸なものかつ重要な主題(国家や教会からの抑圧)を欠くと厳しいものが多い。1本の小説から10エピソードのテレビドラマシリーズがストリーミングで流される今、4冊からなる超大作小説を2時間28分の映画にする意味はあったのかと。

でも私はこの超大作をスウェーデンへの移民として、歴史の勉強もかねてやはり映画館でみたいな。コロナ規制もまた再開されるけど。

今作でのみどころは、前作ではガミガミ愚痴ってばかりの妻として描かれていた主人公のクリスティーナが、内面のある女性として描かれている点のよう。これはこの50年ですすんだフェミニズムのおかげか? クリスティーナを演じたリーサ・カルレヘッドがあちこちで絶賛されています。

2021.12.22

2021.12.22

スウェーデンの国営鉄道SJは、大都市を結ぶ高速列車の運行を年末にかけてこれから毎日約30本ずつキャンセルすることを発表した。クリスマスまでだけでもその数は100本となることを、昨日テレビでSJの広報担当者が謝っていた。背後にあるのは職員不足と病欠者の多さだ。

一年のうちでも一番旅行客が増えるこの時期、ずいぶんと前からチケット予約していた人も多いが、予約していた列車がキャンセルされてしまった人は他の列車などへ予約が振り返られる。

SJは運行する列車の車両を連結して長くし、1本の電車で運べる人の数を増やすことでこの状況に対処しようとしている。また短い距離であれば振替バスでの運行もあり、日時はずれてしまうが、移動はできることは保証するそうだ。

列車が来なかったり遅れたりは結構頻繁にあるけれど、この規模のキャンセルはこれまで聞いたことない。やはりパンデミックの影響か? SJの広報担当者は客に謝ると同時に、多大な仕事量をこなすことになった残って働いている職員にも謝っていたのがスウェーデンっぽい。

増大した病欠者で、運行を取りやめているのはSASも同じだ。

折しもスウェーデンではコロナ感染者増で、再び行動規制の要請が出された。早くも23日、24日から適応される今回の規制は、可能な人はまたリモートワークに戻るようといったものから、お店は営業面積10㎡に客1人など、おなじみ要請たち。12歳以上の外国人は、スウェーデンに入国の際には48時間以内のPCR検査の結果をみせなければならないというのは、結構厳しい規制だな。

とりあえず、冬至は越したので、これからは明るくなる一方なのは保証されているっていうのが、今日の一番いいニュース(?)ですかね?

(冒頭の写真はアンチョビが入荷できなくなってます、というスーパーでの張り紙。気候温暖化の影響か?)

2021.12.21

2021.12.21

スウェーデン最北部の小さな自治体、カーリックス(Kalix)がハッカーによるサイバー攻撃を受けて、ITシステムが停止し業務に大きな支障をきたしている。カーリックスはフィンランドとの国境にほど近い、人口が1万6000人程度の小さな自治体(コミューン)。このコミューンのITシステムが先週の木曜日に、ランサムウェア攻撃を受け、システムが止まってしまった。

ランサムウエア(ransomware)《ransomは身の代金の意》コンピューターウイルスの一。感染したコンピューターを復旧するためとして、不当な料金請求をするソフトウエア。身の代金型ウイルス。

カーリックスでは訪問介護や在宅医療サービスで医療記録や処方薬のデータベースにアクセスすることができなくなり、またコミューンの職員1900名の給与支払いに支障がでる見込みとなった。

現時点では、医療サービスは紙とペンのアナログなデータ共有方法へと移行し、給与は11月分のバックアップコピーを元にした情報で、一部のパートタイムの勤務者を除けばほぼ正確に支払うことができるようだと、昨日のニュースが伝えていた。

ITセキュリティーの専門家は、3年ほど前までは稀に起こる程度だったランサムウェアによるサイバー攻撃は、最近は頻繁に起こっており、システムを復旧するために身代金を払うことを選んだ場合、その支払額は1000万から2000万USドル(約11.5億円から23億円!)となることが多いと話していた。

カリックスへのサイバー攻撃は現在も続いており、最悪の場合新しいシステムを構築するとすれば数ヶ月という時間と多額の費用がかかる見込み。内外に発信するために新しいウェブサイトはオープンしたが、今は職員への情報の伝達にも支障がある状態だという。

今回のサイバー攻撃がどの様におこったかはまだ解明されてはいないが、職員のだれかが、メールへの添付や怪しげなリンクをクリックしたというものではなさそう、とも伝えられていた。

私は普段仕事でもプライベートでも、音声でも動画も通話関係はほとんどアプリを使っていて、電話っているのだろうか? と考えることも時々あるが、カーリックスのニュースを見ている限りは、電話はこんな時に威力を発揮するよう。

ともかくこのカリックス、市長さんはこんなことで世界中から(反面教師として)注目が集まりつつあることに困惑している、と話していたが、きっとこれから長く語られ、参照され続ける事例となりそうだ。

2021.12.20

2021.12.20

会社員や組織に所属して働いている人は、オフィスで働いた方が効率的かそれともリモートワークの方が仕事がすいすい進むのか? これについては、研究者の間でも意見が分かれているそうだが、パンデミックで会社員がものすごく技術を磨いたことがあって、それは、リモートワーク時にいかにも働いているように見せかける方法なのだそうだ。

ごまかすための創造力と努力は無限大。どんな技術が磨かれたかというと

①常にアクティブ状態にする

SlackやTeamsで常に自分がPC上で仕事をしているように見せるため、マウスを扇風機で動かしたり、ミニレールに乗せて走り回せたり。この記事では日本のツイッターアカウントが紹介されていた。

弊社はリモート勤務の際にPCのスリープとか操作中とかが管理者にバレる環境なので、常にマウス操作をしてるように見える装置を作りました。

Mouse MoverやMouse jigglarで検索すると、マウスが動いてアクティブ状態にあるように見せるためにダウンロードできるアプリを探すことができる。キーボード用のものもあるそう。

②早朝にメールやメッセージを送る

アクティブ状態になっていても、連絡がとれないようでは、そのうちに上司や同僚はあなたが働いているかどうかを訝しむかもしれない。そういう時は、仕事をしているように見せるために、一日に数回集中してメールやメッセージを送るとよいと「在宅勤務を成功させるために」の著者アレクサンドラ・サミュエルが推奨している。一番効果的なのは(なんの効果か😉)みんなが仕事を始める前の早朝に重要なメールに返信しておくことで、これを送っておくと、一日中仕事しているようにみえる。

③ビデオ会議では予め撮影しておいた動画を流す

TiktokやTwitterで#zoomhackで検索すると、Zoomで会議に参加していると見せかけて、実は予め撮影しておいた動画をループで流しておくだけ、といったやり方を教えてくれる。またカメラの接続がおかしくてオンできないふりをしたり、わざとミュートにした状態で、なにか熱心に話しているふりをしたり、というトリックもよく使われるそう。

④フェイク通勤

最後のフェイク通勤は、上司を騙すのではなく騙すのは自分で、仕事が捗るためのものなのでちょっと毛色が違うが、多くの人が仕事と家の間にある通勤時間が生活のリズムを刻んでいることに気づいて、会社には行かずとも、いかにも通勤しているように振る舞うようになったという現象をとりあげている。

仕事始める前に散歩したり、家にあるサイクルマシーンで自転車通勤をしてみたり。

毎日片道小一時間ほどかけて電車で通勤していた私の夫は、本を読む時間がなくなったので、朝夕、時々家のアームチェアに腰掛けて「電車に乗って」本を読んでいる。

フェイク通勤を仕事を終わった後にすると睡眠の質がよくなると、これを薦める医師もいる。

私は特にオフィスに行かずとも仕事できるのだが、行ったほうが通勤やオフィスでの階段の上り下りなどの運動量が増えるので、会社に行っている。これも一種のフェイク通勤? 今日もへんな創造力を発揮しなくてもいいように、ちょっとオフィスに運動に行ってきます!

***

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