あなたの家具の二酸化炭素排出量
北欧通信 107
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あなたの家具の二酸化炭素排出量
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防衛費増額のために、なくなる祝日
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支持者を失う極右政党
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15%の人が春に落ち込み、やる気がでない理由
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さらに悪化した世界の報道の自由
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「スウェーデンはもっとスウェーデンらしく」
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未来のスウェーデン女王、ヴィクトリア皇太子。ジェンダー平等や環境問題への意識も高い国で愛される理由とは?【スウェーデン発 みんなと地球の“ラーゴム”なくらし vol.20】
あなたの家具の二酸化炭素排出量
入場無料でおしゃれなカフェやショップも併設されていて、デザインに関する興味深い展示がいつも2、3、並行で開催されているマルメの街中にあるフォルムデザインセンター。
Form fasad – Photo Daniel Engvall
今週はこのセンターへ、以前より気になっていた『NOW OR NEVER – 1KG CO2E』という小さな展示会を見に行った。 これは家具や内装に使用される様々な素材と、その素材の生産過程ででる二酸化炭素量の関係を展示したもので、具体的に1kgの排出量で、どれくらいの素材が生産できるのかなどがわかる。
フォルムデザインセンターは私たちのような一般人へのデザインの普及を目的とする以外にも、デザイナーや建築家など、業界人のハブとしても機能していて、そのような職業人向けのセミナーや講演会なども常時行われているところだが、今回の展示もそのような人たちが、様々な素材が気候変動に与える影響を正しく理解して、よい素材選択ができるようになることを目指している。
温室効果ガス1kgの排出量に相当する木材のボリュームはこんなに大きいけど、金属ではごく少量となる
壁面を使って大きく説明されていたのは、木材だけで椅子を一脚生産すると排出量はたったの0.6kgだけど、金属とレザーでできたモダンな椅子では、その数値は67kgへと跳ね上がるというもの。展示ではまた、同じ素材でも、新品とリサイクル品では排出量が大きく変わってくることも説明されていた。頭では当然理解しているつもりでも、実際の、もののボリュームを見ながら展示をみていると体感として理解できる。
後ろのグラフは2030年までにどれほど急激に温室効果ガスの削減がおこらなければパリ協定は守れないことを示している
今回の展示にはドコモニーのDoconomy 2030 Caltulator(素材の気候変動への影響を計算してくれるツール)が使われている。私はドコモにーについて知らなかったのだが、この会社は「環境負荷の理解、対策、削減を支援するために、個人や企業に第一級のインパクトデータサービスを提供」しており、昨年夏に二子玉川で開催された「Earth hacks マルシェ」での二酸化炭素排出量可視化のためにも、この2030 Calculatorが使われたそうだ。
自分の二酸化炭素排出量を意識するのは、最初はとっつきにくいが、例えば私の場合は、今はだいたい年間7.5トンで、そのうち年一回の日本への旅行が約半分の4トンを占めているとか、ざっくり大きなところを抑えておくとよいことがわかった。排出量は低いほどいいので、選択肢に排出量の高いものと低いものがあれば低いものを選ぶところまでは簡単だが、その数値をどこまで抑えることができるか、その過程はなかなか大変だ。
そんなこと言われてもなかなか自分の排出量を実感として掴みにくいという方は、以前エルの記事でスウェーデンのセレブたちが排出量削減にチャレンジしたテレビ番組を紹介したことがあるので、よかったらこちらも記事も参考にしていただければ。
今日は、え、お隣でこんなことが起こっていたんだ、というデンマークの話。デンマークは、NATO加盟国の目標である、GDP2%の防衛費を2030年までに達成するために、337年間の伝統であった祝日を廃止するというのがそのニュース。
廃止が決まり、昨日が最後となったのは、毎年復活祭後の第4金曜日に祝われていた大祈祷日という祝日。元々は人々に教会での懺悔を促すために作られた祝日だそうだで、現在ではその意味はほとんどなくなってしまったが、多くの子どもたちの入信式がこの日に行われている。
昨年12月半ば、メッテ・フレデリクセン首相が、防衛費強化のための税金を集めるために、国民が働く日を一日増やしたいとの提案し、その後、教会や組合との話し合いもなしに、この祝日の廃止を決めてしまった。
政府はこの祝日をなくすことで毎年35億クローナ(約700億円)の税収を見込んでいるが、50万人以上のデンマーク人がこの決定に反対の署名をするなど、この政策は与党以外の右派からも(デンマークの伝統を廃止した)、左派からも(労働者の労働条件を悪化させた)強く批判されている。この祝日廃止により、現政権は支持を失い次の選挙での勝利はないだろうとの声も。
記事には、デンマークにはこの大祈祷日に「Hvedeknopper(小麦のつぼみ)」と呼ばれる素朴なカルダモン風味のパンを温めて食べる習慣があることも書かれており、これはこの日はパン屋も仕事をしなかったことから、前日にこのパンを買い当日温めて食べる習慣ができたのだとか。ちょっと探したら、このパンについてこんな素敵な記事を書いてらっしゃるデンマーク在住の方がいた。
たった一日だけど、この国の伝統でもある話し合いによる合意をすっ飛ばして祝日を減らしてしまったことは、後々まで現政権への支持に影響を与えそうである。さて、このパン、期間限定と聞けばますます食べてみたくなるんだけど。
「今選挙があったらあなたはどの党に投票するか?」を聞いた最新の世論調査では、極右政党のスウェーデン民主党が躍進した前々回の選挙の前の2017年11月と同レベルまで支持を減らし(16.4%)、投票者数に換算すると25万人相当の有権者の支持を失った。
同党は、昨年9月の選挙の時に公約として掲げていたガソリンやディーゼル車の価格の引き下げなど、具体的な政策を実現できておらず、また目下国家の最重要課題となっているインフレ対策や危機管理の問題でほとんどなんの役割も果たせずに、支持を失った。
一方、支持を伸ばしたのは中道左派の社会民主党(38.4%)。今回の調査では現在の政権を支えている与党側が合計43.5%の支持を集めており、それ以外の野党を集めると55%となる。
スウェーデン民主党のジミー・オーケソン党首は、選挙の後しばらく表舞台から姿を消していたが、同党が支持を失いつつある傾向を把握してから、最近はまたよく発言するようになった。
有権者が生活に困っている時に同党ができることはあまりないが、それでも、風力発電取り壊しを訴えたり、EUの移民政策によりスウェーデンで同党の主張が通らなくなるだろうことから与党各党と結んだ協約を破棄すると脅したり、はたまたレジ袋税廃止についての発言や、大きなものでは、EUへの加盟を疑問視したりと、直近で、多くの注目を集める発言を行ってきた。(こういうのもあった「国勢調査」か? 抑圧的尋問か?)
ジミーの目論見があたって、スウェーデン民主党が失った支持をまた取り戻すことができるかどうかはまだ未知数だけど、ジミーのお騒がせ発言はしばらく続きそうだな。
ストレス研究所のトビヨン・オーケステッド名誉教授によると、スウェーデンに住むおよそ15%の人が、春の気分の落ち込みを経験する。日が長く暖かくなり、気分が上向きになってもいいこの季節に、気分が落ち込んだり身体が重くてやる気を感じないのは、日光の急激な変化などでメラトニンなど、ホルモンバランスが崩れることによるものだそう。
このうち1〜2%の人は症状が重く治療が必要と考えられており、それには抗うつ薬や対面セラピーそして強い光を使った明かりなどが使われる。また結果が実証されたものではないが、多くの人が外にでて光を浴びる、コーヒーやチョコレートを取ることで気分を上向きにできるそうなので、試してみるといいかもしれない。
私もキッチンのリノベーションが中途半端な形のままで、片付ける気が出てこないのは、きっとこの春のやる気喪失症候群のせいなのかもしれない(ということにしておこう)。
このブログでも何度か取り上げている「国境なき記者団」の世界の報道の自由インデックス。書くたびに状況は悪化しているように思うが、今年はジャーナリストが自由に情報を入手し、そして入手した情報を発表することを妨げられないという「グリーン(以前はホワイトと分類されていた)」カテゴリーの国は8ヶ国だった。同カテゴリーには例えば、2015年には21ヶ国が分類されていた。
北ヨーロッパ諸国は毎年トップに顔を並べていて、今年も一位はノルウェー。その後にアイルランド、デンマーク、スウェーデンと続く。この先もフィンランド、オランダ、リトアニア、エストニアとご近所の国が並ぶ。日本は今年は68位と、以前から同じあたりをうろうろしている。
日本は、メディアの自由と多元主義の原則を掲げているが、伝統、経済的利益、政治的圧力、男女の不平等などにより、ジャーナリストが政府の責任を追及するという役割を十分に発揮できていない
スウェーデンが去年の3位から4位に順位を落とした理由としては、昨年大きな議論となったスパイ活動防止法や、警察がジャーナリストの行動に介入しようとしたことが5度ほど確認されたことが挙げられている。警察はジャーナリストを拘束し機材を没収したし、またジャーナリストがネオナチの集会の取材中、脅迫など危険な目に会っている時に、近くで傍観していたという件も報告されている。
今年のレポートは、調査の対象の3分の2の国で、プロパガンダ、フェイクニュースやAIなどを技術を使って、権力者が情報操作を行っていることもまとめている。
世界のジャーナリストの、文字通り命がけの仕事はもちろんのこと、この報道の自由インデックスの作成と発表自体も、大きな脅威にさらされていると思われる。私にできることは、このインデックスの存在を広めること、そして価値ある記事を読んだり広めたり、購読料を払ったりすることだと理解している。このブログ記事を読まれた皆さまもぜひ。
昨日のメーデーに、去年までの8年間、政権を担っていた中道左派の社会民主党が行った演説を、SVTのマルモステイン政治解説員が分析していた。
社会民主党は昨年9月の選挙で、左派連合としての選挙には負けたものの、極右政党であるスウェーデン民主党と戦う姿勢を明確にすることで、党としては支持率を伸ばし、特に都市部や女性の間での支持の伸びが顕著だ。
昨年9月からの短期間でも、右派政権のもと、それまでの社会民主主義的な政策が徐々に代わりつつあるなか、昨日のメーデーで社会民主党がだしてきた新しいスローガンが「スウェーデンはもっとスウェーデンらしく」だ。
マルモステイン解説員は、これが何を意味するのかはまだよくわからないとしつつも、排他主義的な極右政党的価値観への戦いだけでは、社会民主党の戦いはこの先厳しいものとなること、もっと明確な右派とは一線を画す具体的な政策を打ち出さなければこのさきも支持が伸びるかどうかは怪しいという。しかし、移民の大規模な流入の結果、国全体で協力する左派的な価値観を、大きく打ち出すことも難しいというのが彼女の分析だ。
メーデーではもちろん極左政党の左党も、減ってきている福祉政策への予算の分配を訴えていたが、今の右派政権はこの先まだ3年以上続く。次の選挙の時にはどんな勢力分配になっているのだろう。
Linda Broström/The Royal Court of Sweden
今日はメーデーでスウェーデンは祝日です。そんな労働者の日だけど、今日はスウェーデンの王位継承者、ヴィクトリア皇太子の話をどうぞ。エルのラーゴム連載のこちらの記事、本日から公開中です。
ヴィクトリア皇太子とはこんな感じの人で、本当に素晴らしい人だと思ってます。
スウェーデンの王位継承者であるヴィクトリア皇太子の話を耳にする時は、いつも少しの驚きがあって、その後で「なんだかちょっといい感じだな」と思う。
彼女がニューヨークで、自ら手を上げてタクシーを止めている写真を見た時もそうだったし、長女のエステル王女と森で一緒にゴミ拾いをしている様子を見た時もそうだった。そしてノーベル賞の授与式に、母であるシルヴィア王妃が23年前の授与式で着用していたのと同じ「ニナ リッチ」のドレスで出席していた時も、「ストックホルムプライド・パレード」の開幕スピーチをした時も。世界の中でもリベラルな価値観が社会に浸透しており、ジェンダー平等や環境問題への意識が高いスウェーデンを、まさに体現するような皇太子として彼女は活躍してきた。
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そして昨日はヴァルボリでした!
今年は人も少なめで家族連れが多く、子どもが走り回るけどまったり感漂う家から近いヴァルボリ会場で、ちょうど遊びにきてくれていた友人たちと一緒に焚き火をみました。今朝も冷えてたけど、これで本格的な春の到来から夏になるか?
では、また来週!
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