スウェーデンはブルーでブラウンで、ちょっと大丈夫?
swelog weekend nr26
〈今週のトピック〉 スウェーデンはブルーでブラウンで、ちょっと大丈夫?
〈今週のブログ記事〉 人がいっぱい
〈今週のスウェ推し〉 街で森を担ぐ Tree Kånken
スウェーデンはブルーでブラウンで、ちょっと大丈夫?〈今週のトピック〉
「Blåbrunt Sverige (ブルーブラウン・スウェーデン 右派が選挙に勝てばあなたの暮らしはこう変わる)」マッツ・ヴィンボリ著
ブルーでブラウンのスウェーデン?
難民のクウォータ受け入れ制度やジュネーブ条約などの国際的な人道的取り組みからは距離をおき、スウェーデンに住んではいるがスウェーデンやEU諸国の国籍を持たない人は、児童手当、住宅手当、育児手当や最低保証年金の対象外とする……。
来年9月11日に予定されているスウェーデンの国政選挙で、中道右派の穏健党、キリスト教民主党そして極右政党であるスウェーデン民主党による右派連合が政権をとった場合、私たちを待ち受けているのはそんな閉じたスウェーデンかもしれない。
独立系の研究者のマッツ・ヴィンボリは、先月出版した『Blåbrunt Sverige (ブルーブラウン・スウェーデン 右派が選挙に勝てばあなたの暮らしはこう変わる)』の中で、十分あり得るかもしれないそんなスウェーデンの近未来を描いている。
ブルーとは右派の穏健党、キリスト教民主党そしてスウェーデン民主党のイメージカラーを指し、ブラウンはナチスを想起させ、ナチスが党のユニフォームなどに採用していた色で、ナチズムに党の起源を持ち、極右で移民排斥の考え方を党の中核とするスウェーデン民主党を表す色として使われている。
国の政策はこうなる
右派が政権をとったとしても、スウェーデン民主党は自ら政権担当能力には疑問を持っているのか(?)、大臣を入閣させることにはあまり関心はない。おそらく政権は中道右派の穏健党とキリスト教民主党が担当することになるが、スウェーデン民主党は、今のスウェーデンで常に2番めか3番目かに多く支持されているその立場を使って、あらゆることに影響力を持とうと圧力をかけてくるはずである。
右派を代表し、直近でも2006年から2014年までの8年にわたり、ラインフェルト首相のもとで連立政権をまとめてきた穏健党が掲げるのは、新自由主義的な経済政策、企業や富裕層への減税、福祉や教育の切り詰めや民営化などだ。
それだけでも、私などは、やめてくれ! と思うが、スウェーデン民主党が一番圧力をかけてくるのは、当然のことながら経済や社会福祉政策というよりは、移民政策そのものである。難民の受け入れは拒否し、これまでスウェーデンがやってきた武力戦争の被害者に手を差し伸べるといったようなことも、きっとやめてしまうことになるのだろう。
また同党は住民であってもスウェーデン人ではない人にはあらゆる手当や保障を中止しようとするはずだが、スウェーデン人には失業保険や健康保険や年金をもっと手厚くしたいと考えている。スウェーデン民主党の目指すところが実現すれば、スウェーデンで10万人の子どもたちが児童手当を受ける権利を喪失する可能性があると、マッツ・ヴィンボリはまとめている。
今、スウェーデン民主党が権力についているコミューンはどう?
スウェーデン民主党はスウェーデンに290あるコミューン(市町村にあたる)のうち既に5つで、穏健党などと連携して権力の座についている。すべてスウェーデン南部にあるこの5つのコミューンでは、スウェーデン民主党は穏健党の政策に協力する程度でこれといった影響力を行使していない。(ただし、そこでは高齢者介護施設や市営住宅が民営化されたり、利益目的の学校が設立されたりと、典型的な新自由主義的政策がどんどん実現されており、それはそれで恐ろしい)。
目立つのはHörbyコミューンでの動きで、ここでは例えばレインボーフラッグの掲揚が禁止されたり、またコミューンの職員にスウェーデン民主党のやり方を強制しようとした結果、職員の半数が辞めてしまうといったことが起きている。
これ以外の他の285のコミューンでは、これまでは穏健党は、極右のスウェーデン民主党と組むよりも、超党派で左派陣営とも協力しながらのコミューン運営を行っていた。ただし2018年の前回の選挙の時以降、両党はぐっと接近していて協力体制を明確にしており、来年、国政レベルで右と左の権力地図が書き換えられてしまうと、スウェーデン民主党がコミューンレベルでももっと影響力を持ってくることは十分考えられる。
10月に入りコロナ関連の規制がほぼ撤廃されたスウェーデンには、今ちょっとした開放感も漂っている。しかし一難去って(去ってないか?)、また一難。この先すぐ、現職の首相の辞任に連動して、スウェーデンでは初の女性の首相も誕生しそうなのに、そのまたすぐ先の来年の9月にはブルーでブラウンなスウェーデンが待っているのだろうか? これからも政局の流れをしっかりと追っていくことにしよう。
swelog weekendは、その週のトピック記事と一緒に、毎日更新しているブログswelog(スウェログ)のニュース記事へのリンクも一週間分まとめて、日曜日にメールで配信しています。購読の登録は下記の「無料購読をする」ボタンからどうぞ。
人がいっぱい〈今週のブログ記事〉
いやー、コロナ規制がほぼなくなったスウェーデンは、ニュースでも街でも、人がいっぱい。若者たちで混み合ったクラブやフットボールの試合。そして、ルンドの街を闊歩する学生のグループやギュウギュウのレストランやバーの様子を連日みているわけですが、スウェーデンってこんなに人がうじゃうじゃいるところだったっけ? って妙な驚き方をしてみたり。
スウェーデンでこう思うなら、日本が日常生活に戻っていく頃にはもっと驚くだろうなーとも思う。コロナ前と同じくらい混み合った電車に乗ろうという勇気のある人はいるのだろうか? (それとも日本の電車はコロナ禍でもずっと混んでいたままだったのだろうか?)
こっちのバスはちょっと混みあってくるとそれ以上は乗せてくれないのだけれど、今週はバス停で待っていても、目の前を混んだバスが通り過ぎていって学校に遅れるというかわいそうな高校生たちの話も読んだ。
さて、コロナやワクチンのことを取り上げた記事は、いつも多くの人に読んでもらってるようなのだけど、今週、私がお勧めしたいのは「「投資されない女たち」を是正する」と「個人商店の次は、チェーン店も消える街角」(というよりは、その記事にでてくるルンドの文房具屋さん)です。どうぞよろしく!
街で森を担ぐ Tree Kånken〈今週のスウェ推し〉
さて、秋といえばハイキング。
私の秋用のフェルラーベンのG-1000のジャケットはスウェーデンに引っ越してきてすぐのバーゲンで買った、20年もの。なのに(?)とっても丈夫で、これから先もまだ20年くらいは使えそう。
でも新しいカッコイイシェルジャケットほしいなぁ、このジャケットは雨の中はつらいしと、スウェーデンではみんなにおなじみのアウトドア用品店、Naturkompanietのカタログをみていたらこんな広告が!
日本でも人気のフェルラーベンのコンケン(Kånken)を「木」で作りましたと書いてある。なんでもフェルラーベンブランドの発祥の地、スウェーデンの最北地方の森の樹木から作った繊維でできたものなのだとか。
今、素材についてもっと詳しく調べて訳そうと思ったら、このTree Kånkenは、既に日本でも8月末から発売されているようで、Youtubeへ日本語字幕付きの動画もアップされていた。動画では素材のサステナビリティに関して説明している。これまでのコンケンの生地は日本製だった! 知らなかったわ!
お店で実物を見た感じではこれまでのゴツい質感から、生地はなめらかになった感じがした。デザインも1978年に発売された初代コンケンのデザインに戻っているそうで、機会があればぜひ一度お店で手にとってみてください。
そして私の秋の新しいシェルジャケットは……買っちゃったんだなぁ、これが。
Naturkompanietの会員になると、どれだけ買っても合計からすべて10%引きしてくれる割引券が、2ヶ月に一回(だと思う、多分)送られてくるカタログについてくるので、もちろん、これを使用 ☺︎。
それでも20年前のジャケットと比べて価格は5倍くらいしたので、このジャケットはこれから100年位は持つということだろうか? 私がこの世からいなくなった後、誰に使ってもらうか、今から考えておかなければ。ああ、フェルラーベンの物持ちのよさは、時には悩みのタネである。
それにしても174センチ身長のある私が、この国ではSサイズを買うというこの不思議よ。
では、また来週!
興味がありそうな方にもswelog weekendをぜひご紹介ください。ニュースレターの転送もご自由に(転送されたレターを受けられた方、無料の読者登録はこちらからどうぞ)。感想やご意見はこちらのメールに返信していただくことでも、私にダイレクトに届くので、ぜひこの返信機能もお使いください♪
すでに登録済みの方は こちら