職場での人種差別はどう生まれる?
swelog weekend nr 28
〈今週のトピック〉 職場での人種差別はどう生まれる?
〈今週のブログ記事〉 差別はある、から始める
〈今週は怒ってます!〉 在外公館投票の体制のお粗末さ!
職場での人種差別はどう生まれる?〈今週のトピック〉
「スウェーデンの職場での肌の色による差別は、社員や役員のネットワークを通じた採用プロセスを重視したり、職場に「うまく溶け込む」人を採用する企業で多く見られる」
これはストックホルム広域圏自治体の依頼をうけて、ルンド大学の研究者が行った調査でまとめられた結論だ。スウェーデンの労働市場には肌の色による差別が存在していることは、これまでも複数の研究結果が明らかにしていたが、今回の報告書は、その差別がどのように起こりそれが続いていくのか、その差別が起こるメカニズムを明らかにしようとしたものだ。
スウェーデンの様々な職場で働く約3000人を対象としたアンケートの結果と、マネージャーや経営者へのインタビュー、またスウェーデン統計局による統計数字からまとめられたこの報告書は、人を「白人」と「非白人」に分け、白人には昇進の機会が多く与えられるし、様々な恩恵を受けることが多いと指摘する。また自分自身が人種差別的な考えを持っているか否かに関わらず、この差別を生む構造を永続させるような考え方や行動を取る人が多いことも明らかにされた。
もう少し具体的にはスウェーデン、西ヨーロッパ、北米の出身者は給与も高く、社内での教育機会や、昇進などのキャリアアップのチャンスも多い。一方「非白人」グループの中の32.5%の人が、過去1ヶ月以内に、自分の民族的バックグランドや肌の色を理由に職場で異なる扱いを受けたと回答している。中東やアフリカ出身の人に限定すると、その割合は46%まで跳ね上がる。
スウェーデンではこれまでも多くの職場や採用の現場で人種差別への取り組みが行われてきたが、今回の報告書は、さらに踏み込むような対策、例えば差別禁止法を変更して規制や制裁を強化したり、また労働組合も巻き込んでより差別のない公正な待遇への対処が求められると指摘する。
例えば今、性別で男女間の給与の差がないかを、体系的に把握し是正する取り組みが定着しているように、民族的な出身地や肌の色による差別に関しても同様の取り組みを行っていくことが提案されている。
現在のスウェーデンの主だった統計では、国籍や出生地では統計がとれても、例えば肌の色で人を分類したものはない。また多くの「非白人たち」が、ここに差別があると指摘すると、「白人のスウェーデン人」たちから抵抗にあい、この問題に対処するのは簡単ではないと感じていることも、多くのマネージャーが証言している。
問題は一筋縄では解決しそうにないが、この報告書は、個々人の差別的な指向や感情をあげつらうのではなく、なぜその差別がなくならないのか、その構造的な仕組みに光を当てたという意味において重要だ。
人を採用するときに、知らない人を採って失敗してしまうリスクを考えると、自分の知っている人が推薦する人を採用するという、ネットワーク型の採用方法のメリットは大きい。私もスウェーデンで仕事を通じてできたネットワークを、わらしべ長者のように使って、これまで仕事を確保してきた口である。
ハードルは高くなるかもしれないが、ネットワーク方式ばかりに頼るよりも、もう少し間口を広げた方法もあるだろう。以前ブログで取り上げた、職のない移民にインターンの機会を優先的に提供するというのもその一つだと思う。
また今後、新しい統計方法などで、はっきりとは見えない差別を明らかにしていくことも重要だろう。臭いものにはフタをせず、やはり歴然と、差別はいつもそこにある、から始めるべきのようである。
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差別はある、から始める〈今週のブログ記事〉
上で紹介した今週のトピックを取り上げたのは、やはり、水曜日にマルメで開催された反ユダヤ主義に関する国際会議について、ブログで2日にわたって取り上げた影響を受けていると思う。
もうすぐ退任するロベーン首相の置き土産ともいわれた、彼が主催したこの反ユダヤ主義国際会議。まずは無事開催できてよかったと心から思う。
今週はその他にmetooの話題や、女性の少ない各ノーベル賞受賞者の中でもそれが輪をかけて少ないノーベル経済学賞と女性受賞者の話も取り上げた。また、衝撃的だったノルウェーでの事件について読む中で、目にとまった犯罪統計の話もあった。
仕事のためにどれだけ移動することを許容できるか? という視点でみると興味深い、南の失業者に最北の地で働いてもらうという取り組みについても書いたが、まだまだ紹介したいニュースは他にも一杯あったのだけど、秋の一週間はまたたく間に過ぎていったよ。
在外公館投票の体制のお粗末さ!〈今週は怒ってます!〉
そして、そんなあっと言う間の一週間の中でも、これって、憲法! まではいかなくても選挙法違反とかではないのか! とあまりに驚いて声もでないのが、郵便投票と世界各国の日本国大使館や領事館など公館での今回の衆議院議員選挙投票への対応のお粗末さだ。
投票用紙の取り寄せは、選挙の公示を待たずともできるとスウェーデン大使館からお知らせも来たが、やはり今の郵便システムをいまいち信用できないなぁと躊躇した私は、今回はコロナの規制もなくなったことだし、隣国コペンハーゲンの日本国大使館に出向き、そこで直接投票しようと考えていた。
公示が10月19日とわかった時点で、おそらくその次の週末の23日か24日の、どちらか一日くらいは投票所はオープンしているだろうから、どちらかの日にコペンハーゲンまで行けばいいや、と考えていたら…… 💢
在デンマーク日本国大使館で投票できるのは10月19日(火)と20日(水)のたった2日だけ! 19時までやっているから、仕事が終わってから来い、ということだろうけど、ちょっと対応日数が短すぎるでしょう!😡
また同じ日本国の公館なのに、世界各国で対応状況が違いすぎるというのも、ちょっと理解に苦しむし、さらには早々と郵便で投票用紙を取り寄せようとしていた人たちの元にも投票用紙がまだ届いていなかったり、また公示されてすぐに投票用紙を送っても締切に間に合うのかどうなのか不安な人もたくさんいる。
デジタル庁ができたからといって、すぐにデジタルで投票ができるとは期待もしていないけど、なぜこんなにせわしなく、多くの海外在住の有権者を排除するかのような日程で選挙を行わなくてはいけないのだ!?
各国の公館がどんな状況なのかはこちらの↓ツイッターアカウントに詳しい。そしてもう既に何人もの人が書いているけれど、これ、本当にこんな対処でごまかそうとしている国をみんなで訴えたいですわ! 海外在住日本人差別だろ!
#在外投票 #在外選挙 #郵便投票間に合わない #ネット投票 #やっぱネット投票しかない
と腹が立ったまま終わるのも悔しいので😅 昨日のスウェーデンのClimate Liveのリンク貼っておきます。注目は13歳のアーティストOscar Stembridge君。1:41:00あたりからです♪
(グレタのスピーチは3:07:00あたりから、で、その後すぐにTusseが子どもたちと歌うGrowもよいですよー)
では、また来週!
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