国営酒屋の責任あるワイン調達

安すぎる洋服、安すぎるコーヒー、安すぎる雑貨。あなたが楽しく買い物しているお店では、倫理的かつ責任のあるやり方で原材料の調達や仕入れを行っているでしょうか? 
酒類は国営販売店で売られる形式のスウェーデンで、国単位で酒の買付けを行っているシステムボラーゲットが、ワイン製造に関わる人たちの労働条件の調査に着手しました。あなたのワイン大丈夫?
ブロムベリひろみ
2021.09.19
誰でも

swelog weekend nr 24

〈今週のトピック〉  国営酒屋の責任あるワイン調達
〈今週のブログ記事〉 コロナ以前のあのごちゃませ感のswelog復活? 
〈今週のスウェ推し〉 スウェーデンの新グリーンスター・ミシュランレストラン

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国営酒屋の責任あるワイン調達〈今週のトピック〉

国営酒類販売店とオックスファムが協力

水曜日の朝の6時から酒の話? 15日の朝のニュース番組で国営酒類販売店であるシステムボラーゲット(Systembolaget、略してよくシステーメットとも呼ばれる)の人が話しているのが耳に入ってきた。 朝っぱらからシステーメット? 何があった? と思って話を聞き始めると、システーメットの担当者は、NGOのOxfam(オックスファム)の人と一緒に出演していた。

「オックスファム」といえば、英国に住む私たちにとって大変なじみがある非営利組織・慈善(チャリティー)団体の一つです。街角のあちこちにはオックスファムが運営するチャリティー・ショップがありますし、貧困撲滅を掲げて世界各国で人道支援活動に取り組んでいることもよく知られています。

朝から喧嘩? 言い争い? と思った私は見当外れもいいところ。システーメットとオックスファムは共同で、ワイン摘みの現場の労働者の勤労環境を調査して報告書をまとめたというニュースだった。

もっと具体的にいうと、このニュース番組でインタビューに答えていたのはシステーメットの倫理・サステイナビリティ担当ディレクターで、この報告書はシステーメットの依頼を受けてオックスファムが現地調査を実施し、詳細なレポートにまとめたものだった。

今のイタリアワイン業界にある強制労働、劣悪な労働条件

オックスファムのウェブサイトで英語で公開されている「スウェーデンで消費されるイタリアワインの背後にいる労働者たち」と名付けられた118ページの報告書からわかるのは、イタリアのブドウ畑で働く人たちの劣悪な労働条件だ。働いても生活できないほどの低賃金、犯罪組織による強制労働。さらには危険な場所で適切な保護具もなく働かされたり、特に女性や不法滞在の移民がとりわけひどい扱いを受けているという。

番組でシステーメットの担当者と一緒にインタビューに答えていたオックスファムのポリシー・マネージャーは「このような劣悪な労働条件の話は、遠い国で起こっていることで、ヨーロッパ内の話ではないと考えるのは大きな間違いだ」と話す。

報告書で取り上げられている問題のあるワイン製造業者のうちの1社は、システーメットの持つサプライチェーンと直結していたが、これまでの独自調査してきた中では、ポリシーに違反したことは報告されていなかったとシステーメットはいう。

取引先が監査に来た時などは表の顔を偽り、現場で本当はどんなことが行われているのか、よくわからないこともある。今回、システーメットは、長年世界各地で劣悪な労働条件に関して調査を行い、声を上げ続けてきたオックスファムという力強いパートナーがあって初めて、真相調査が可能になったようである。

大きな買い手であるからこそ持ち得る影響力

北欧の小国とは言え、ひとつの国で消費される酒をまとめて買付けするシステーメットは、ワインの購買者として非常に大きな影響力を持っており、その力を使うことで業界の慣習を変革していく使命を自覚している。

またイタリアは世界のワイン生産量の約4分の1を占めており、国内には100万以上のブドウ畑がある。イタリア一国が持つ業界全体へのインパクトも大きい。システーメットと イタリアという組み合わせで、起こすことのできるインパクトは意外と大きなものになるのかもしれない。

消費者としてこれまでは安くておいしいワインを飲むことができればそれで満足だった人も、これから先はやはりもう少し考える必要があるだろう。なぜこのワインはこんな安い値段で売られているのか? このブドウを摘んでくれた人は誰なのか? 私たちはもっと思いを馳せる必要がある。だれでも飲んでる時には気持ちよく飲みたいだろうから、せめて購入する時だけでも。

かといって高いワインであれば、よい条件でつくられているといった単純な話でもなく、消費者にとって、このワインが公正な労働条件のもとで生産されたかどうかを判断することは難しい。システーメットでは2022年の年初を目処に、公正な労働条件のもとでつくられたワインを集めた特別なコーナーを設置して、消費者の意識を高め購入の手助けをすることを計画中だ。

これがどのような規模の取り組みで、どのようなコーナーになるのかまだ詳細は発表されていないが、スウェーデン国内で酒を買う人はもれなくシステーメットに行くことになるので、多くの人がこのコーナーの存在に気がついていくはずである。

サプライチェーンの暗部を明るみにしないと、大きなリスクに

ワイン業界に限らず、これからの時代の製造業にとって、サプライチェーンの末端まで倫理的、SDGs的なポリシーが守られているかどうかは、企業を取り巻く数あるリスクの中でも、自社だけではコントロールできない大きな問題だ。かといってシステーメットが言うように、自社で行う監査だけではできることには限りがある。

オックスファムは近年大きなスキャンダルが報道されたり(上で引用したイギリスの記事に詳しい)と、難しい局面にもあったようだが、世界の人権、労働問題に関してはプロ中のプロ、時には過激すぎる?NGO。

システーメットとオックスファムの組み合わせは意外だったが、大企業もこれからはこのような信念をもったNGOと協力して、自社の業務が内包してしまっている暗部を自ら明るみに出していくことを恐れずにやっていかないと、いずれは暗礁に乗り上げそうである。例えばしばらく前に問題になったユニクロのウイグル問題における柳井会長の発言をひとつとってもこの流れは明らかだ。

立場の弱い人を利用しようとする人はどの世界にも、世界のどこにでもいる。スウェーデンやフィンランドへいちごやベリーを摘みにやってくる季節労働者をひどい条件で働かせている話は、折につれニュースになる(例えばアフトンブラデーットのこの記事〈罪悪感無しでいちご食べられますか? 騙されたイチゴ摘みのアニータの時給は44クローナ〉)

それにしても今、気になっていて早く読みたいのが日本のこの本『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』。

オックスファムは日本に以前は事務所があったが今は閉鎖してしまったようだが、日本企業のサプライチェーン先の労働条件ではなく、日本人の日本での労働条件を調べるためにまた日本にきてもらったほうがいいのでは? 日本人の労働条件は大丈夫ですかね?

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コロナ以前のごちゃませ感復活?〈今週のブログ記事〉

さて、今週ブログで取り上げた話題を振り返ると、コロナ以前のswelogのあのまとまりのない感じというか😅、雑多なニュースがごちゃまぜになったあの感じに戻ったようで、これは世の中が少し落ち着いついてきたという喜ぶべき状態なのかどうなのか? このままコロナは話題のひとつといった位置づけになっていくのでしょうか?  それならいいんだけど?

swelog.miraioffice.com
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スウェーデンの新グリーンスター・ミシュランレストラン〈今週のスウェ推し〉

今週のスウェ推しはレストラン。とはいっても行ったことのないレストランばかりで恐縮ですが、月曜日の夜にミシュランが北欧向けガイドの最新版(こんな時代だけど今も「本」でも出ているのだろうか?)で新しい星番付を発表しました。今回スウェーデンで新規に星を獲得したレストランは4つ。

まずはストックホルムのユールゴーデンのスターシェフのいる「Aira」

guide.michelin.com

そしてヨーテボリの「Project」

guide.michelin.com

スウェーデンの西海岸の街ヴァルベリ郊外の「Äng」

guide.michelin.com

最後にエーランド島にある「Hotell Borgholm」

guide.michelin.com

なかでもÄngは、サステイナビリティへの取り組みと食品廃棄物対策が評価され、グリーンスターも獲得したとか。場所も我が家から一番近く、ヴァルベリはすてきなカルバアドヒュースもある大好きな街。よし、思い切って予約だ! 少し先になりそうだけど、また訪問できたらレポートしますね。

スウェーデンのファインダイニングで私の特推しは、なんと言ってもストックホルムのGastrologik. ミシュランは二つ星。また機会があればぜひ再訪したいです!

Gastrologicのバーコーナー。この後、改装されたとききました。こちらもグリーンスター・レストランです
Gastrologicのバーコーナー。この後、改装されたとききました。こちらもグリーンスター・レストランです
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今週はニュースレターの構成、並び順を少し変えてみました。こんな感じの方が読みやすいとか読みにくいとか、またご意見やご感想があればぜひお教えください。

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では、また来週!

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