女性と年金
木曜日に新型コロナのワクチンの一度目の接種を受けました。混んでたらいやだなぁと思っていたけれど、自転車で訪れたルンドの町外れの空き倉庫を利用したワクチン接種会場は、ガラーンという音が響いているようなガラ空きぶり。
注射されるのは久しぶりでちょっと緊張しましたが、針を感じる暇もなく接種自体はあっという間に終わりました。金曜日は針を打たれた左腕にちょっと違和感があって、また体が少しだるかったような気もしたけど、それがワクチンのせいなのか花粉アレルギーなのか、はたまた更年期? っていうくらいの軽い副反応で私は終わったようです。
私が打ってもらったのはファイザー・ビオンテックのコミルナティで、接種した記録証みたいなものをもらいました。
表側には私の氏名と接種した日や使われたワクチンのバッチナンバーなどが書かれています
一回でも接種を受けた人の数を増やすという方針でやっているスウェーデンでは、私も二回目の接種までは少し時間があいて、ほぼ6週間くらい先の7月13日に受けることになってます。スウェーデンではここのところ、感染状況はすいぶん収束してきているようですが、みんな天気もいいからといってパーティーなどガンガンしたりしないように、って、公衆衛生庁のテグネルさんが木曜日の記者会見で釘を指してたけど、レストランやバーなどが夜の10時半まで営業できるようになった初めての週末、お天気の良さも相まって、街はかなりの賑わいだったようです。
2021年5月31日〜6月5日のニュース
今週、自分にとってちょっと重かったのは「デンマークと難民」のニュース。世界中で助け合っていこうねという高い理想だけではやっていけない現実に、デンマークが示した、自国の国土からの難民の排除といっていいこの方向はこの先の欧州各国の世論形成に大きな影響力を持ちそうです。 スウェーデンの現在の寛容な難民、移民政策を疑問視する声もさらに大きくなり、次の選挙でも大きな争点になっていくことは間違いありません。
ニュースのこの先の展開が気になると言えば、同じくデンマークが関わっていた衝撃のスパイ事件の話も。スウェーデンの首相は真相を解明したいと言っていましたが、さてどうなるのか? 政府や行政の行っていることの国民への透明性は非常に高いここスウェーデンでも、こと軍事関連の詳細については国家の機密情報として守られており、よくわからないままうやむやになってしまうこともありますね。
あとは、コロナに関連しては、今規制が緩和されてきてきたり、ワクチンの対象年齢が下がってきて妊婦さんたちが悩ましい選択を迫られている話、また今盛んにさえずっている鳥たちの鳴き声を8時間生中継したスローラジオの話題、さらにはクイズ化してきたニュースといった話題も今週取り上げました。
今週のテーマ・女性と年金・スウェーデンの場合
先日父が他界して、一人で暮らすことになった母の生活に触れ、改めて高齢者の生活を支える「年金」について思いを馳せる機会を得ました。また少し前に「年金が少なすぎる、国に騙された」と訴えるスウェーデンの80歳の女性年金生活者のインタビューを聞いたりもしました。今日は、最近ちょっと気になっていた年金についてです。
スウェーデンでは4年に一回行われる国政選挙がもう来年に迫ってきており、ここでは医療、難民・移民、法と秩序などの問題と一緒に、年金改革も大きな焦点になると言われています。そう言えば、日本でも今年は衆議院選挙があります! コロナやらなんやらあまりにも問題が山積みで、年金のことなんか考えてられない人にも、考えるためのヒントを少しだけお届けします。
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スウェーデンの年金制度の特徴
いまでこそ日本でも将来の自分の公的年金の受給額がわかる「ねんきん定期便」などのサービスがありますが、そのようなものがなかった2000年当時、スウェーデンに引越してきて送られてきた年金に関する通知書、通称「オレンジの封筒(Orange kuvert)」に0(ゼロ)ばかり並んでいるのを見た時は「えらいこっちゃ」と軽い衝撃を受けました。
衝撃的なゼロの行進
1999年に大きな年金制度の改革があり、今もその仕組が続いているスウェーデンでは、年金の積立は所得があって初めてできることになっています。給与が多いほど年金の積立額も将来の受け取り額も多くなります。
これは自営業の人にも同じなので、所得税を低く抑えたいから所得を低めに申告するというようなことをすると、将来の年金の受け取りが低くなってしまうので所得を多めに申告したい人もでるほど、この仕組は徴税にもよい影響を与えてきていると言われていました。
また、積立に関連するのは所得であればいいので、給与でなくとも例えば疾病保険や失業保険を受けている時も年金積立の原資となります。スウェーデンの年金制度について、以前簡単にまとめてみた資料があるので、こちらからいくつかご紹介します。
厚生労働省のまとめ資料へのリンクはこちら
男女同一賃金でも解決できない年金受給額問題
同一職業同一賃金という点においては男女間の格差は低く、他国をリードするスウェーデンですが、年金支給額に直接つながる生涯所得を考えた時に、ここに大きな罠があります。女性の就業人口が多い教職や、また保育、介護などのケアの仕事では他の職業と比べて給与が低いという問題です。この問題に関しては、ブログでも機会がある度に取り上げています。
スウェーデンで男女間での就業率の差はこんな感じになっています。
私が使った統計局の資料は2016年版でしたが、2020年の最新版はこちらからダウンロードできます。
年金に関する不満や問題は、年金制度だけの問題ではなく、今の雇用条件をどれだけ改善していくかという問題にほかなりません。給与額と年金積立額、そして年金受給額がはっきりとした形で繋がっているスウェーデンでは、その問題が比較的わかりやすいですが、それでも職種間の賃金格差の問題はなかなか解消されません。
あんまり社会的に意味のない仕事をしても高給をもらっていた広告代理店で働いていたことも、またその仕事が嫌になり、辞めてアウトドアショップで時給で働いたこともある私には、今日本で盛り上がりをみせる「ブルシット・ジョブ」の議論には心の隅々まで共感するところがあります。
そして給与の高いブルシット・ジョブと、やりがい搾取されるケアの仕事の間の給与格差は、給与をもらっている時だけでなく、年金を受け取るようになっても辛い形で現れます。
世の中に問題は山積みだけど、年金の問題も若い人にもぜひ一度でいいから考えてもらえるきっかけに、このニュースレターがなっているといいな、と願いつつ。
ではまた来週〜👋
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