フェイスブックとEU規制

フェイスブックのアルゴリズムはどう規制されるべきなのか? EUが準備をすすめる2つの新法案が可決されれば、アメリカのテック企業のあり方に大きな影響を与える。グーグルの欧州責任者、フェイスブック・スウェーデンの企業ポリシー責任者と、話題の本『監視資本主義』の著者ショシャナ・ズボフにインタビューしたスウェーデン公共放送の番組内容から、現状をまとめてみた
ブロムベリひろみ 2021.11.14
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swelog weekend nr 32

〈今週のトピック〉  フェイスブックとEU規制
〈今週のブログ記事〉 女性首相の誕生を待ちながら
〈今週のスウェ推し〉 ロバート・グスタフソン

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フェイスブックとEU規制〈今週のトピック〉

巨大テック企業の懲らしめ方』と名付けられた経済番組が取り上げていたのは、目下、欧州委員会が準備をすすめる新しい2つの法規制。

特にアメリカのテック企業のみをターゲットにしたものではないが、規制対象となるのはほぼGAFAのような巨大企業に限られるため、この規制法が成立するとアップルやグーグル、フェイスブックのこれまでのビジネスに大きな影響を与える。

デジタルサービス法とデジタル市場法

検討されているのはデジタルサービス法(Digital Service Act)デジタル市場法(Digital Market Act)の2つ。デジタルサービス法は、違法コンテンツや有害コンテンツの監視・削除義務化を強化し、レコメンドやターゲット広告の利用とそのアルゴリズムなどについても透明性を求めるもの。

先週、欧州議会の公聴会で証言したフェイスブックの内部告発者フランシス・ホーゲンさんも「世界の代表的な基準になりうる」と評価した法規制案だ。

これに対してフェイスブック・スウェーデンのポリシー責任者は、上記のスウェーデンの経済番組で、アルゴリズムはビジネスの根幹でもあり、全面開示は難しいと説明していた。

デジタル市場法はデジタルビジネスの競争環境を整備する規制で、巨大プラットフォーマーたちの競争力と、ひいては私たちの暮らしへの影響力を抑制しようとするものだ。企業買収に関する取り決めや、自社のサービス同士を優先的に組み合わせることを禁止しようとするものだ。

規制は「ゲートキーパー」と名付けられた巨大企業にのみ適応される予定で、対象となるのはEU加盟国3カ国以上でサービスを展開し、月間アクティブユーザー4500万人以上の企業。もちろん売上高での適応基準もある。

グーグルの欧州責任者、マット・ブリッティンは「この法律で、EU圏の住民は質の劣った二流のサービスしか使用できなくなることを心配している」と話す。グーグルでレストランの名前を検索してもグーグル・マップと連動できないので、地図情報が一緒に提供できなくなるというイメージだ。

法案可決は長引くか?

法案は昨年の12月に欧州委員会(EUの政府にあたる)が提出し、欧州議会の担当委員会が検討を進めているものの、規制の中身について合意点を見いだせておらず、12月に議決にかけられる予定となっているがどう落ち着くかはわからない。

決まるまでにはもうあと数年の時間を有するとの声もあるが、フランシス・ホーゲンさんの活動で今テック企業の悪事! に衆目が集まっていることもあり、案外早く法案は可決されるかもしれない。

民主主義の未来をかけた戦い

今スウェーデンでも日本語でも翻訳書が出て注目の『監視資本主義・人類の未来をかけた闘い』の著者ショシャナ・ズボフは、「これは民主主義の未来をかけた戦いなのだ」と、番組のビデオインタビューで強調していた。彼女は、これらのテック企業は、個人のプライバシーを土台にしてデータマイニングを行う監視資本主義で莫大な利益を挙げていることを指摘し、アメリカや世界の他の国々もEUの法規制の例に続くことを強く願うと話している。

無料で提供するデータと、ここでもやっぱり気になるデンマーク

番組の中で主題とは別に「ほぅ!」と思ったことが2つほど。

1つ目は解説者のITジャーナリストが「フェイスブックは私たちの行動データから利益を挙げているのだから、無料で使えることをありがたいとは思わずに、フェイスブックから情報提供料としてお金をもらってもいいくらいだ」と話していたこと。

これについてはショシャナ・ズボフも、資本主義では安価なものを世界中から探すとはいえ、原材料の調達にはまだお金がかかっていたが、監視資本主義では(私たちがホイホイと喜んでサービスを使うことで)テックプラットフォーマーたちはタダで原材料を入手できるのだ、と話していた。私たちもテック企業との付き合い方を考え直す必要がありそうだ。

もう一つは、デンマークは世界各国へ国別の大使を派遣するのと同じ感覚で、アメリカのシリコンバレーに「デジタル大使」を派遣して、情報を集めたり各企業のやり方に影響力を持とうとしていること。

テック企業がアルゴリズムを少し変えるだけで、デンマークの企業の業績ががらっとかわったり、子どもたちの気分が悪くなったりするのであれば、ある意味これは政府としては、当たり前のことかもしれない。

番組は、フェイスブック・スウェーデンのポリシー責任者も含んだ出演者の全会一致で、スウェーデンでも同様の大使の派遣の検討をすすめるべき、という意見で締めくくられた。

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女性首相の誕生を待ちながら〈今週のブログ記事〉

今週はこんな感じ↓でした。ルンドでは灰色の毎日が続いていますが、今週もあっという間に一週間が過ぎていった。来週は、スウェーデン初の女性首相が誕生するかどうかのニュースでいっぱいになりそう。

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ロバート・グスタフソン〈今週のスウェ推し〉

今週は毎日この人の顔をみていたので、わからない人も多いと思うのだけれど、無理やり推してみよう。

ロバート・グスタフソンはスウェーデンでは誰でも知っている人気のコメディアンで、世界中でヒットした2014年のスウェーデン映画『100歳の華麗なる冒険』でも主演の破天荒なおじいちゃんを演じていた。

2018年のドラマシリーズ『Det som göms i snö(雪に隠されたもの、英語タイトル " The truth will come out" )』では、悲惨な子供時代の思い出と兄の自殺に苦しむ刑事を演じて好評を得たが、今回このドラマのシーズン2の全5話がスウェーデンのストリーミングサービスのViaplayで公開された。今週私と夫は毎晩、毎晩、シーズン1から2の全13話を 観ていたのでした。(英語のトレーラーはこちら。シリーズ1シリーズ2

スウェーデンミステリー界の超大物作家G.W. パーションが実際に起こった事件から着想したこのドラマシリーズに登場するのは、腐敗した政治家や検察といった権力者や、モラルの崩壊した警察官たち。Thomas QuickやKapten i klänningという実際に起こった連続(?)殺人事件や警察署長のレイプや少女買春事件を題材にとり、スウェーデン社会の悲惨な裏側を描く。

普段はこの手の話を受け止める力にかけるヘタレの私も、このシリーズを最後まで観ることができたのは、ロバート・グスタフソンからにじみ出る人生の愛嬌のようなもののおかげか?

ロバート・グスタフソンはまたNetflixで先日公開されたミニドラマシリーズ『Den osannolika mödaren』で、スウェーデン人の国民的トラウマ「パルメ首相殺人事件」の容疑者も演じこちらでも高い評価を得ている。

私はNetflixは数年前にちょっとハマりかけてこれはイケないとサブスクリプションをやめてずいぶんになるのだが、どうするかな? 観たいなー、観るかなー? これは日本でも公開されてこの先、日本語字幕とかもつくのだろうか?

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では、また来週!

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