ギャング団と犯罪小説

スウェーデンでの銃による射殺事件の増加はとどまるところを知らず、今年はこれまでに既に60人が銃で殺された。殺された人のほとんどは若い男性だ。この状況はスウェーデンの犯罪小説が扱う内容にも大きな影響を与えている
ブロムベリひろみ 2022.12.10
誰でも

ギャング団と犯罪小説

暴力的犯罪組織による銃殺事件は増加する一方で、今のところ直ちに状況がよくなるような様子は見られない。この状況への理解を深め、自身の犯罪小説を迫真に迫るものとするために、独自調査を実施している作家たちが、その思いをダーゲンス・ニュヘテルで語っていた。

Kokain(コカイン)』を執筆するにあたり、作家のパスカル・エングマンは麻薬の売人に密着取材を行った。スマホアプリを通じて発注が入り、10分もしないうちに電動キックボードで配達完了。ドラッグの在庫状況に合わせて価格調整が行われ、だぶつき気味のクスリはバーゲン価格で売られる。彼が取材したギャングたちは、とてもビジネスライクに「商売」を行っており、品質保証の証として、パッケージにブランドのロゴまで入っている。

しかしエングマンの心に残ったのは「ここから足を洗いたい」と願う若者たちの切実な声だ。

犯罪小説は、常に社会とその時代の空気を反映してきた。スウェーデンでは1970年の初頭にマイ・シューヴァルとペール・ヴァールー夫妻が、社会性問題を取り上げたシリアスな犯罪小説を書くという野心を掲げて「事件小説」(『刑事マルティン・ベック』シリーズ他)を開拓して以来、社会派の犯罪小説がジャンルを確立した、とダーゲンス・ニュヘテルの記事は説明する。

暴力組織間の抗争に関しては、SVTの記者であるディアマント・サリーフによる『Tills alla dör(皆が死ぬまで)』という優れたノンフィクションも最近出版されたが、同じ問題をフィクションとして描くことには利点もある。その一つが、フィクションとして個人や組織が特定しないという約束の元では、取材対象者が心を開いてくれること。

今のギャング小説のさきがけで、2006年に『イージーマネー』(映画やドラマシリーズでも有名)を世に出した人気作家のイェンス・ラピドゥスは、今のギャング団間の抗争、発砲事件の背後にあるのは、縄張り争いや金といったものよりも、個人の威信や男のプライドの問題があると指摘する。ラピドゥスは今は作家業に専念しているが、2017年までは加害者側の弁護人として働いており、犯罪者からの声を直接聞くことで、小説への洞察力やインスピレーションをもらっていたと話している。

最新作の『I dina händer (君の手の中に)』が今年のクライムノベル・オブ・ザ・イヤーにノミネートされているマーリン・ペーション・ジオリトは、作品を執筆するにあたり警察の調査報告書や判決文などを読み込み、問題の解決に取り組んでいる人たちへ取材を念入りに繰り返す。

彼女がこの最新刊で描いたのは、社会制度から見捨てられた子どもや若者が、帰属意識や現金を簡単に与えてくれるギャングの格好の餌食となっていく様子だ。ペーション・ジオリートは執筆を続ける中で、小説の中心となるテーマが、若者の状況そのものよりも、司法制度や社会システムがこのような若者を救えないという、いわば社会の裏切りに移っていったことに自身でも驚いたと話す(この小説はNetflixでドラマ化が決まっている)。

私はスウェーデン語を勉強している時に、授業で始めてスウェーデン語で読んだ本がヘニング・マンケルの『殺人者の顔』で、この小説があまりに暗くて怖くて、それ以来スウェーデンのミステリーや犯罪小説は食わず嫌いなのだけど、どうやらこの国の今を理解するためには犯罪小説を読むことがかかせないようだ。まずは映画化されているものから観ていくってことで、なんとか。

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今週は日経で力の入った「北欧」特集もやってました(成長の未来図・第3部・北欧の現場から日本が進むべき道のヒントを探る)。

光の部分にだけフォーカスを当てるのではなく、うまくいかなくても諦めず努力を続けるところをこの特集でも取り上げていたのが、私がブログでお伝えしたいと思っていることにも通じる。日経の購読者でなくても、ユーザー登録すれば一月に10本までは無料で読むことができるので、未読の方はぜひどうぞ。連載はまだ続いているようで、土曜日の朝はスウェーデンの起業家座談会も紹介されていました。

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ラジオ「つぶやきで語るスウェーデン」はしばらくの間、お休みします。もうちょっと考えて出直すわ。

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コロナやらインフルエンザやらただの風邪やら? 理由はそれぞれ異なるようだけれど、自分や子供の調子が悪くて、家からリモートワークしたり仕事を休んだりする人が目立ってきた。

昨日は久しぶりに公衆衛生庁の記者会見の内容も報道されていて「新型コロナの患者が急増している」ということが伝えられていた。感染はすべての年齢層で広がっているが、特に高齢者施設やホームヘルパーサービスを受けている人たちの間で顕著で、確認された感染者数は前週との比較で58%も増えた。スウェーデンでは新たな規制や感染症対策が導入される予定はないが、感染した人は家にとどまり、まだの人は予防接種をするようとの話が続く。

ただでさえ寒波で電力供給状況が圧迫されている中、今週は稼働している原子力発電所の原子炉がまた一つ、メンテナンスのために一時停止され、常に電力の供給量に問題があるスウェーデン南部のスコーネに住む私たちのもとには、昨日から「この先、急に停電になる可能性があるので、備えよ」というお知らせが、コミューンや会社や学校などから届き始めた。

コミューンからお知らせが来たという一軒家に住む同僚は「毛布やろうそくや、また電気なしでも食べることができる食料の用意を」という案内について話す。ほんまかいな、とちょっと驚くが、基本的に電力が止まりそうになったら、会社や学校には来ないで家にいて、ということらしいので、この冬もこれから年明けくらいまでは可能な人はまた家にいることを基本に考えたほうがいいのかもしれない。

それにしても今夜予定されている、3年ぶりのノーベル賞の授賞式と晩餐会。あんなきちきちに座って食べたり飲んだり話したりなので、ここでいろんなものが空気中を飛び交って広がっていくだろうことは間違いなさそう。

おぉ!待ってました!と興味津々で記事を読んだけど、どうやら私には関係のない話だった😅

今ヴェルムランド地方の2つの病院などで実験的に行われているのは、救急部署に勤務する看護師のフルタイム勤務を30時間まで減らすこと。今年の3月から始まったこのプロジェクトの対象となっているのは62歳以上の職員で、例えば対象者の一人ウルリカさんは、今のシフトでは週末以外に月曜日も休み、あと2日は1時間少ない7時間勤務で仕事を終える。

プロジェクトが目標としているのは、より長く健康的に働く職員を確保すること。年末までの予定で行われているこの実験プロジェクトが成功裏に終われば、各病院はより多くの職員を採用することになるが、スタッフの病欠や離職率を低く抑えることができて、採用コストも減るのであれば、全体としてそれほど多くの費用がかからないのではないかとの期待がかかる。

同様の取り組みはスウェーデンの様々な自治体のソーシャルワーカーたちに向けても行われており、例えばソーシャルワーカーの勤務時間を1日7時間にしたユースダールでは、採用が容易になり、採用した職員の人件費も削減されるという結果になった。

そういえばソーシャルワーカーの働き方に関してはこういうニュースもあったなぁ。

記事にはアイスランドでは多くの労働者が、職種によっては週40時間労働から32時間〜36時間勤務に減らすことができる権利をもっていることにも言及されている。

日本で働いている人からは叱られてしまいそうだが、私も1日6時間勤務くらいか、もしくは週に4日だけ会社員として働くというくらいであれば、ちょうどいいのではないかと思うことがある(何が何に対してちょうどいいのかについては、各自でご自由にご解釈されたし😅)早朝からフル回転で仕事してると8時間って結構長いですしね…

昨日からカナダのモントリオールで生物の多様性保護を議論する国連の会議COP15が始まっている。SVTの朝のニュースでは、生物種が絶滅の危機に瀕する原因とその対処法、また成功した例を簡潔にまとめて紹介していた。

ある地域に存在する生物種が絶滅の危機に陥る要因は大きく5つにまとめることができ、その影響力の大きい順に①森の伐採などによる自然環境の消失②捕獲のしすぎ③気候変動④自然環境の汚染⑤外来種による淘汰、となる。

このうち北欧では②に関してはノルウェーでタラの漁獲量を制限することで減少傾向に歯止めをかけることに成功し、またスウェーデンでもヘラジカやクマの狩猟を制限することで持ち直したという事例がある。また④に関しても1990年代にはスウェーデンの西海岸では汚染が進んだ結果、甲殻類が生存の危機にさらされていたが、規制の結果環境は改善されたとの説明があった。

しかし③の気候変動による影響は、この先おそらく雪だるま式に増える一方で、捕獲量の調整や汚染の除去といったやりかたのように、好影響が比較的短期間に簡単に反映されるものでもない。

スウェーデンで絶滅問題で常に話に上がるのは、アウトドアメーカーの名前(フェルラーベン)にもなっている北極キツネで、氷河の消えゆく北部山岳地方でこの先どうなるのか心配が募る。

モントリオールの会議はこの間のCOP27にも増して各国の合意が難しそうな状況だそうで、今年は気候変動問題におけるパリ協定のような位置づけとなる、世界全体で生物多様性を保護するための枠組みについて交渉されるそうだが、こちらも世界の豊かな国と貧しい国が広大な自然を搾取から守るために誰がお金を払うべきかという点で対立しているという。そして世界の指導者たちからの関心が低すぎるとも。世界の指導者たちの関心は、今は武器購入の予算作りに向かっているようだしなぁ。

「スウェーデンの法律は性別や宗教による差別をするものではなく、またスウェーデンのソーシャルサービスが子どもを誘拐することはありません」と最近のニュース番組で発言していたのは社会サービス担当大臣のカミラ・ヴァルテルソン・グローンヴァル。

なぜ大臣がテレビでこんなことをわざわざ発言しないといけないかというと、TikTokを始めとしたSNSで、スウェーデンではケースワーカーが子どもを誘拐するという偽情報が出回っっているからだ。スウェーデンの社会サービスに対するネガティブキャンペーンは以前からあったが、ここのところTikTokで勢いを増した新たな展開が続いている。ケースワーカーたちへの暴力的な傾向が顕著になり、つけられたり暴言をはかれたりする職員も後をたたない。

スウェーデンでは子どもの誘拐はしないが、子どもたちを守るための法律はある。子どもたちが緊急に保護が必要な状況で、保護者の同意が得られない場合、ソーシャルサービスは直ちに子どもを保護することができる。子どもを保護するのは、子どもの健康や発達に害を及ぼす重大なリスクがある時で、たとえば家族から暴力や虐待にあったり、子どもが自分で危険に身を晒している時にも保護されることがある。

ソーシャルサービスは必要であれば、警察に支援を要請することもできるし、また保護者は子どもの強制的保護が不服であれば、裁判に持ち込むこともできる。今のスウェーデンの社会サービスへの悪意を煽るこのネガティブキャンペーンは、このような仕組みの中で子どもを保護された親たちが、スェーデン社会への信頼を失墜させようとする極端な意見やイデオロギーと結びついてより活動的になり、組織化されていったものだと専門家は分析する。

スウェーデンに関するニュースをアラビア語で配信しているAllkompisの代表は、このようなネガティブキャンペーンの結果、本当に支援を必要とする人たちがソーシャルサービスに連絡することをためらうようになるといったリスクも指摘する。SNSの意見は過激であればあるほど拡散しやすくなるようで、TikTokでのネガティブキャンペーンの対象はソーシャルサービスからスウェーデン政治や社会そのものへと広がっている。この衝突の背後には家族の役割に関する考え方の違いもある。これ、いったいどこまでエスカレートするのだろう。

ヘルシンボリに高齢者と若者が一緒に住むという成功したプロジェクトがあるのは知っていたが、この集合住宅への入居の条件として「隣人と週に2時間以上話すこと」が明記されているのは知らなかった。

「Sällbo」はヘルシンボリ市の社会統合プロジェクトの一環で、ここではスウェーデンに一人で逃げてきた難民の子どもたちと、普通の若者、そしてそれまでは一人住まいだった高齢者が一緒に住んでいる。もともとは高齢者向け住宅に改装をすすめる予定だった建物があり、それが2015年の難民危機の際に急遽、同伴者のいない子どもの難民むけの住まいとして使うことを余儀なくされた。そしてその後3年間は、98人の子どもの難民向け住居として機能した。子どもたちは成人していったが、この人たちも住む場所は必要で、また高齢者向けの住宅も引き続き検討されていたので、これらの人たちが一緒に住むというアイディアが実現された。

今のSällboには51戸のアパートがあり、そのうち31戸は70歳以上の高齢者向け。残りの20戸の半分は新しく来た難民、後の半分は18歳から25歳までの若者が住んでいる。住居はそれぞれ2ルームの個別の空間だが、共有のキッチンとリビングやエクササイズ用の空間やアーティストスタジオ、ゲームやライブラリーなどがあり、いつもSällboではさまざまなアクティビティが行われている。また一人で逃げてきた難民の子どもが高校を卒業した時に一緒に祝ったり、問題の種となる共用洗濯室の掃除問題を、クリスマスの催しの一環として劇にして笑い飛ばしたり、というような出来事もある。

2019年の11月から実験的に薦められていたこのSällboは今年恒久化されることが決まり、これまでの時間でお互いのことをすっかり知るようになった住民たちは、これからも一緒に暮らしていくことになった。入居に際してはヘルシンボリの住宅供給公社が希望者に入念なインタビューをして、社会全体を反映するような様々な個性の人が集まるミニチュアのコミュニティにしようとしたそうだが、引っ越してきた高齢者はそれまでの孤独感が薄れたことをオープンに話す。

Sällboへの注目は高く、スウェーデン中どころか世界中から見学者がひっきりなしにやってくるが、ヘルシンボリでは同様の住宅をこれ以上運営するのは時間がかかりすぎるので難しいと考えている。しかしここから学ぶべきことは多いし、仮に同じような建物が見つかったらまたやらない手はないとも。

スウェーデンでは60歳以上の女性の57万人、男性では33万人が一人暮らしをしており、合わせて約100万人だが、これは60歳以上人口の35%にあたる。スウェーデン医療社会評価機関(SBU)によると社会的に孤立している状態と個人で自覚している孤独は、共に死亡率の上昇と関連していることがわかっている。

私も集合住宅に住んでいるが、朝や夕方同じ時間に外出する隣人でもなければ、なかなか隣人にも会うこともないのが現実。毎週2時間隣人と話すことが決められていて、隣人と出会う場所もあるというのは、なかなか素晴らしい仕組みだなと思う。

先週、失業保険の申請システムから、信用情報提供企業のシステム、さらに住宅組合の洗濯室の予約システムに至るまで、広範囲なサイバーアタック事件が起こっていた。これは数百社の顧客を持つITシステム提供会社Softronic社がサイバー攻撃を受けたことによるもの。

Softronicは、失業保険を提供しているA-kassaや信用情報を提供しているUC社、建設業で働く人のための労働組合Byggnadsや地方自治体の住宅提供組織などにITシステムを提供しており、そのため各企業、組織で影響がでている。失業保険は先週の木曜に支払われるはずであったが、現在A-kassaのすべてのシステムは停止していてA-kassaとは連絡もとれない状態になっている。

Softronicは金曜日に出したプレスリリースで「セキュリティ関連のインシデントがあり、予防措置としてSoftronicの動作環境へのネットワークトラフィックをすべて停止した」と発表したが、詳しい取材には応じておらず、現在停止している各システムがいつ再開されるのかについては見通しが出ていない。

セキュリティの専門家は、まだ公表されていないがもっと多くの企業や組織のITシステムで影響がでていると考えており、Softronic社がランサムウェアの被害にあっている場合、問題解決には数ヶ月とかかるかもしれないと述べている。

別件で、木曜日には防衛庁のウェブサイトがサイバー攻撃にあって10分間ダウンしていたというニュースもあり、年の瀬が近づいて慌ただしいが、皆さまもくれぐれも怪しいメールやリンクなどにはご注意ください。

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